インターネットの備忘録

インターネット大好きな会社員がまじめにつける備忘録です。

創作

『週刊じゃらん』さまにて小説「風に吹かれて 3人の私」を寄稿しています

2020年、いろいろありますがお元気ですか。だいぶ間が空いてしまいましたが、夫も娘も猫もわたしも元気にやってます。もう8月なのでお誕生日月なのですが、40回以上もお誕生日をやってると、いろんな思い出があっていいですね。 さて、『週刊じゃらん』さま…

ホームランの夜

賑わう居酒屋のレジでお会計を済ませ外へ出て、少しすねたような様子で人の流れを眺めている彼の後ろ姿を探した。投稿した作品の合否が来ず、気落ちしている彼を励まそうと仕事帰りに夜の新宿へと繰り出したけれど、ビールと焼鳥の串が並ぶ机には落胆のため…

夢日記_170222

湿気で洋服がべたべたと肌に張り付く。ビーチサンダルのような心もとない靴底のサンダルを履いて、どこかの路地を歩いている。周りは薄暗いが、日暮れのせいなのか、頭上を覆う建物が陽の光を遮っているからなのか、分からない。すれ違う人はみな、白い開襟…

夢みるまぶたの話 2

丸い眼球のカーブに沿うように降ろされたまぶたを長い睫毛が縁取っている。睫毛はせわしなく微動していて、何か夢を見ているのだろうと予測させる。その下にある泣きぼくろは、深い呼吸に合わせて上下している。耳を凝らさなくても寝息が聞こえる距離にいる…

捨てられなかった香水瓶の話

ひとりの男の登場がわたしの季節を区切ってゆくのであれば、新しい香りはわたしを新しく塗りつぶしてくれるような気分になる。 夏が終わり秋が来て、冬の気配を感じはじめたのでこれを機に新しい香りに変えた。今まで使っていたものはある人からの贈り物で、…

あやふやなままでいい

飲んだ酒の名前が最近、ぜんぜん覚えていられない。さほど酔っているわけではないと思う(思いたい)のだけれど、すすめられて飲んだワイン、焼酎、日本酒、ウイスキー、様々なおいしいお酒の名前が、次の日になると、すっかり忘却の彼方にいってしまう。 そ…

息苦しく閉じたあたたかい世界の話

「来週のお前に手紙を書こうぜ」 と彼が言い出したのは、プールに浮かんで遊ぶのにも倦いた遅い午後だった。場所はお互いの初ボーナスを使い飛んできた海外のビーチリゾートで、たかが知れている予算で張り込めたのはホテルのグレードだけだった。それでも無…

死にたがりのハンバーグ

まずは玉ねぎを炒めます。大きめの粗みじんにした玉ねぎを、フライパンに油をしいて、中火で炒めます。後からまた火を通すので、ここではあまり神経質に炒めなくても、大丈夫です。あっというまに焦げてしまうので、その点だけ気をつけて。ほんのり茶色にな…

まーちゃんのりんごと甘いシロップ

りんごの旬は、秋から冬にかけて。主に寒冷地で育成され、品種によって、春先まで店先に並ぶものもありますが、やはり秋冬のくだもの、という印象があります。りんごは実が硬く、引き締まったものを選びます。手に持ってみて、ふわふわと柔らかかったり、軽…

餃子で包む、包んで、食べる

豚と牛の合い挽き肉には、塩と胡椒を多めに振っておきましょう。キャベツを粗みじんにしたら、塩をして、ボウルに置き、水が出るのを待ちます。寒い時期なら、キャベツを白菜に変えてもいいでしょう。ニラは好みの量をざく切りに、ネギも同様。餃子のタネに…

夢みるまぶたの話

とにかくよく眠るひとだった。

さよならピンチヒッター

「本当は一番に会いたいのは、お前じゃなかったんだ」 と彼が言ったのは、渋谷円山町の焼肉屋だった。

恋が終わった話

再会したのは、最寄り駅の本屋の文庫本コーナーだった。8年を経て再会した彼は妻と子供を授かり、わたしは結婚と離婚をして独り身に戻っていた。

外した眼鏡の話

久しぶり会っての第一声が「眼鏡がない!」っていうのは、どうなの、と言われたのは表参道のカフェだった。あたらしい仕事の話も含めて、会って話そうと待ち合わせた午後で、きっかけはFacebookだった。

なくした傘の話

「そうやって物を使い捨てにするような女は嫌いだ」