10年ぶり?くらいに荒木陽子著「愛情生活」を読み返しました。
写真家・荒木経惟氏の愛妻・陽子さんのエッセイ集で、出会いから結婚、その後に至る日々で彼女が思っていることが様々な文体で描かれています。
妻であること、女であることが彼女の中では等しく同居していて、それを実現させているのが荒木経惟氏のロマンチシズムなんだろうか、と思いながら読み終えたのですが、印象強く残ったのは「生活」の強度でした。エッセイからは荒木経惟氏との穏やかで色彩豊かな生活が伝わります。酔って帰ってきた夜、ふたりで行った旅先での出来事、日常の食卓の様子、通った銭湯の思い出、どれもが当たり前にあることのようで、とても美しい。そしてその美しさを受け止め気付くことができる陽子さんの視点を借りて、日常の輝きに触れることができる、そんな一冊でした。
自分の過去の結婚生活を振り返ると、確かに思い出すのはそういうささやかなことばかりです。タオルの畳み方や掃除機のかけ方の違いに驚いたことだったり、風邪で寝込んだ相手の熱っぽい息遣いだったり、夜中に目を覚ましたとき感じる気配のあたたかさであったり、わたしもそういう美しさの中で生きていた時間があったのだと思い返しました。お酒を飲んだりはしゃいだり、着飾ってデートしたり、涙を見せてすったもんだしたり、そういう非日常も楽しいけれど、性愛も含めた愛情が日常や生活に根ざしているのは、とても素敵ですね。一人暮らしに戻ったときは自分で自分の生活をコントロールできる気楽さがあんなに嬉しかったのに、また誰かと生活するのも悪くないよね、と思えているので、現金なものだなと思っています。最後に好きだなと思った一文を引用して終わります。
「経ちゃんがこんなに有名になるって、アナタ最初から解っていた?」
と母に問いかけられた事がある。
「有名になるかどーかは解らなかったけど、この人と一緒にいれば、私は幸せになる、と思ったわ」
と私は答えた。
彼以外には、私を理解する人間はいないんじゃないかなあ、と今でも私は思っているのだ。これが幸せでなくて、何でありましょーか。
---P.33より
今日はそんな感じです。
チャオ!