「料理することはすでに愛している。食べる人はすでに愛されている。それを当たり前のことと信じて疑わない。そうして、料理をつくる人が食文化を担っている。」土井善晴『おいしいもののまわり』、序文からすでによさが炸裂している……
— はせ おやさい(GORGE.IN) (@hase0831) 2016年2月22日
と書いたのですが、本当に名著だと思うので改めて。
寝る前のくつろいでいるときに読む本、というカテゴリがあって、食べものの本をよく選びます。お気に入りだと、「台所のオーケストラ」(高峰秀子)、「わたしの台所」(沢村貞子)、「おなかがすく話」(小林カツ代)など。わたし自身、食べること、料理することが好き、というのと、料理について書かれたエッセイは、なんというか「ちゃんと生活をする」というふうに気持ちをリセットしてくれる気がするのです。
その中でも、装丁・内容ふくめて大好きなのが、この「おいしいもののまわり」です。
「おかずのクッキング」や「きょうの料理」の土井善晴先生が、雑誌「おかずのクッキング」に連載されていたものをまとめた一冊で、料理道具や調理テクニック、心得などについて書かれており、品のある語り口と料理人としての矜持がはしばしに滲んでいて、とても素敵なのです。サイズはA5、表紙が柔らかく、ごろんと寝転がりながらぱらぱらと読むのにもよくて、テーマごとに添えられている写真もカッコいい。1テーマ、2テーマ読んで、そこに書かれた「食」について思いをめぐらし、それを提供する職人さんの姿勢に触れ、「プロってカッコいいなあ、わたしもがんばるぞ」と気持ちよく眠りにつける。
好きな言葉をいくつか抜き書きしますね。
だれに教えられることもなく、自らおいしいものを見つけることは喜びだ。日常の閃き、小さなことであっても、身体に新しい血を流してくれるような気がする。
ー季節を感じること、信じること
レシピ通りに焼けば、ある程度はおいしく出来上がる。それで充分なのだ。プロじゃあるまいし。家庭のことだからほどほどで良い。こだわりすぎては良くないことはすでに知っている。穏やかな気持ちでできる範囲のものをつくれば、家族は幸せだ。
ー火の通り加減をみる串
切り方には必ず根拠がある。料理上手は、包丁のスピードや手際のかっこよさばかりではない。それ以上に美意識を働かせて、どう包丁するかを考えられる人のほうが、断然、腕は上なのだ。
ー包丁するという調理法
調理とは、調理経験のみが技術を向上させるのではない。おいしいもののまわりにあるなにかを感じること。それは家族、人の人生、歴史や文化、信仰や哲学によって素材との接し方を見極めることである。おいしい食べものは、必ずひとつの文脈の中に存在する。
ーあとがき
などなど、「あたりまえをあたりまえにすることがいちばん大切」が、しみじみと実感されるような文章がいっぱいです。派手だったり最新のお料理ではなく、日々の家庭の料理をちゃんとすればいい、というのがスッと入ってきて、肩の力が抜ける感じがします。
わたしたちの身体は過去の自分が食べたものでできているわけで、たまにサボることがあったとしても、それを忘れずに暮らしていたいなと思うのでした。
あ、いま気付きましたが、寝る前に食にまつわる本を読むようになったのは、翌朝のお弁当作りをサボらないためのマインドセットなのかもしれない……。単純ですね。ともあれ、ぜひとも手元に置いておいてほしい、おすすめの一冊です。
今日はそんな感じです。
チャオ!