タイトルは本文からいただきました。すごく良い言葉だなと思います。
次世代ミュージシャンのためのセルフマネージメント・バイブル 自分を作る・売る・守る!
- 作者: 永田純
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
- 発売日: 2011/12/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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今のミュージシャンの状況って?
制作環境の変化、インターネットの進歩で随分状況が変わってきているなというのはおぼろげに感じていましたが、はっきりと明文化したものを読んだことはありませんでした。レコードやCDが売れない、音楽はもうだめだ、みたいなことを言われているけれども、物事が常に変わっていくのであれば、音楽を生業にしようとする人たちの関わり方も変わっていくのが当然で、それは具体的にどういった変化で引き起こされているのか。
引用しつつ感じたことを。
ミュージシャンが手にした3つの手段
制作手段〜DAWの普及と発展
└ 原盤を作ることができる
広報手段〜SNSを始めとするネットメディアの多様化
└ 情報管理やイメージ作りができる
頒布手段~音楽配信サービスの普及と進歩
└ 自分で発売・販売することができる
制作手段、楽器が弾けなくても(買えなくても)、メンバーが集まらなくても、制作ソフトが手に入って、使える環境さえあれば、音楽を作ることができるようになったこと。
広報手段、Facebook、Twitterにかぎらず、Tumblrやブログなど、自分自身でどういった情報を発信してどう見られたいかを考えることができるようになったこと。一方、自分でコントロールするのが苦手な人が炎上したりしているのもこの点ですね。
頒布手段、とりあえず音源を発表するだけならニコ動やYouTube、Ustreamでもいいですよね。販売するのでも、ぱっと思いつく範囲でちょっと前に話題になった「gumroad」、インディーズアーティストの音源を買うならここみたいになりつつある「bandcamp」、最近気になっているのが世界中の配信サイトで音源を販売できる「TUNECORE」。
Amazon e託販売サービスなんかもありますね。決済手段が本当に増えてきたなーという感じです。
今までは自分でコントロール出来なかった部分を、「やろうと思えば自分でやれる」ようになったのが素晴らしいと思います。
ミュージシャンがもともと持っていた4つのもの
歌うこと・奏でること
└ 著作隣接権
詞や曲を作ること
└ 著作権
プロデュースすること・事業を展開すること
└ 原盤を作る・グッズを作る・MVを作る
音楽への愛
└ すべての原点
「やろうと思えば自分でやれる」ようになったことで、自分ができることと、その権利を守るための方法を知る必要が出て来ました。今までは、4つ目以外のことはヨソにお願い出来ていたわけで、見合うメリットもあったわけですよね。
とはいえ、当時から不満もきっとあって、メリットとデメリットのバランスが取れ、収入的にも何とかなっていたからおさめていた時代は終わって、こういったことも俯瞰で見て、「自分にとってのベストなバランスはどれだ?」というのを判断しなければいけない時代に変わってきているのだと感じました。
自由を手に入れるためには責任が伴う、という感じでしょうか。
とても共感しました。
自分と自分の好きなもの、それを包括する自分の人生をベストなバランスで保っていくために試行錯誤していかなければいけなくて、そのためには何をどうしなきゃいけないか、知ることが重要。
マネージメントとは何か、プロダクションとレコード会社が担ってきた機能は何か
ネット上ではJASRACがやたら嫌われていたり、レコード会社やプロダクションが悪みたいな感じの論調をたまに見かけていて、非常にドントトラストオーバーサーティ的な若さを感じますしわたしもちょっとそういうフシがありました。
でもまあ企業が営利活動として取り組んでいる以上はある程度オトナの事情とかもあるんだろうなと分かるようになってきて(わたしもすっかりオーバーサーティー……)、やみくもにファックと叫ぶよりも「何をやってきてくれたけど、何をもう任せられないのか」は知っておいたほうがいいんじゃないかなーと思うようになってきました。
で、じゃあいわゆる「ミュージシャンを取り巻くオトナたち」はどんなことをしてきたのか、ということがマネージメントについての章で分かりやすくまとまっています。
マネージメントの全体像
☆「パーソナル・マネージメント」
└ デスク業務、アイデンティティ管理
…お金の管理をどうするか?
…アーティストのアイデンティティとは?
☆「プロジェクト・マネージメント」
└ 作る・売る・守る「作る:予算・スケジュールをどう管理するか?」
「作る:形のあるものを作るためのプロダクトマネジメントを知る」「売る:自分の存在をPRする、情報を発信する、情報収集する」
「売る:CDなど形のあるものを売る・オンラインで配信する」
プロダクションが担ってきた役割
・アーティストを保証すること
・アーティストを発掘し、適性を見つけ、伸ばすこと
・アーティストに投資すること
・アーティストに出演の機会を与えること
レコード会社が担ってきた機能
・A&R/プロデュース
・原盤製作(投資を含む企業的な行為)
・原盤制作(制作進行の実務)
・原盤管理
・ビジュアル制作
・プロモーション
・ディストリビューション
・生産管理、在庫管理
・投資
ミュージシャンが音楽を作って世の中に出そうとしたときに、いろんな業務や実務が動いていて、それを手助けする代わりに彼らも利益を分けて欲しいよという主張をしていたわけで、実際のところその主張はそんなに横暴な内容でもなかったんですよね。
ただそこをガメつくやろうとする企業が増えて、こじれていったのが現状なのかしらん、と思いました。
とても分かりやすくシンプルに、誠実に書かれた一冊
上のマネジメントの全体像は図表にしてあるのですが、超わかりやすい。参考になります。また、その表が本のカバー裏にも印刷されていて、パッと見られるようにしてあるのも素晴らしいと思いました。
これ以外にも、なるほどとスッキリした箇所がたくさんありました。
あんまりいっぱい引用してもアレなので、このくらいにしますが、音楽が作れればそれ以外のことは周りが全部やるから、みたいな状態って本当に限られたワンアンドオンリーな才能の持ち主にだけ許されることで(売上的にも)、「1人いれば社員100人が食っていける」みたいな才能はないけれど、音楽で食べて行きたいと願うならある程度はちゃんと知識と知恵を付けて、自発的にやっていく必要があるんだろうなと感じました。
でもこれって、知識と知恵とノウハウを身につけられれば、100万枚のヒット曲は出せなくても、好きな曲・良いと思う音楽を作って世に出して、それを選んで大事にしてくれる人たちと出会えて、ちゃんと「好きなことでメシが食える」時代になりつつある、ってことでもあるんじゃないかしらと思います。
そういう意味でも、厳しくもあり、暖かくもある一冊だなと思いました。
各章具体的に何をすべきかまで解説してあるので、超実用的です。読んだ上で「うーん、べつにここまで自分でやるのは面倒だからいいや」でもいいし、「これなら出来るかも!」って思えるなら何度も読み返してマニュアル的にも使えると思います。なんていうか「仕組み」みたいなものが分かりやすく書いてあって、すごく良かった。
専業ミュージシャンじゃなくても、音楽が好きで活動してて、それでちょっとお金が入ってきて、活動費の足しになったらいいなって思ってるくらいの人にも、充分オススメできると思いました。個人的には「バンド運営で大切なこと」がグイグイ来た!
おもしろかったです!
次世代ミュージシャンのためのセルフマネージメント・バイブル 自分を作る・売る・守る!
- 作者: 永田純
- 出版社/メーカー: リットーミュージック
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