インターネットの備忘録

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音のない世界の音楽/映画「LISTEN」観た


LISTEN リッスン 予告編

www.uplink.co.jp

「『ザ・トライブ』が好きならこれも絶対おもしろいので、ぜひ観てください!」とおすすめされたので、なんとか時間をやりくりして観てきました。渋谷UPLINKにて。

 会場に入る前、「耳栓をどうぞ」と言われました。着席をして耳栓をすると、ほぼ無音。衣擦れや他人の息遣いなどがシャットアウトされた状態からの上映開始。

58分間、無音の映画です。

映画「LISTEN」は、聾者の音楽を体験するドキュメンタリーです。物語、というものはありません。ほんの少し、聾者の方たちの語りが字幕で入りますが、それ以外はほぼ手話、舞踏を使って音楽を表現するシーンで構成されています。この映画は、わたしたち聴者に、彼らの音楽を翻訳しようとしてくれている。翻訳された彼らの音楽を、視覚を通じて体験する、そういう映像だと感じました。

説明がないまま映像は進み、さまざまな表現があらわれます。いわゆる単語をそのまま手話に置き換え、表現するもの。手話を踊りの一部として取り入れているもの。ほぼ意味を解読できず、舞踏として表現されているもの。わたしは日常会話程度の手話を使うのですが、単語の意味が読み取れない瞬間と、言っている意味が理解できるものと、両方ありました。感情をそのまま歌詞にして歌う曲、意味のない歌詞を歌う曲、歌詞のない曲、そういう音楽と通じるものを感じました。とはいえ「何を言っているか」はさほど重要ではなく、手話を理解しない同行者にも、その表現は伝わっていたようです。

あるシーンで、登場人物のひとりである米内山明宏さんが、ろう学校時代のことを語ります。音楽の授業が嫌いだった、その時間は、音楽を学ぶのではなく口話法の訓練として使われていて、興味がなかった、もっと音楽を楽しむことを教えてほしかった、というエピソードです。ドキッとしました。わたしの中にもどこか「聴こえないのに、音楽をどうやって楽しむんだろう?」という気持ちがあったのだと思います。その後に続く様々な表現を見て、その思いは消えました。

そこには確かに、音楽があり、彼らはじゅうぶんにそれを楽しんでいたからです。

耳栓をしながら映画を観ていて、自分の鼓動が近く聴こえる瞬間がありました。同時に、何も聴こえないはずなのに、彼ら彼女らの表現から風の音や息遣いを感じる瞬間もありました。そういう「体験」をしたことは得難い時間で、劇場でしか体験することのできない作品に触れられたことを、とても興味深く感じます。

 

なんだかうまくまとまらないな。

自分の固定観念、無意識に思っていたことがこの映像を通じて露出してしまったようで、落ち着かない気分なんです。でも、ほんとうに「何しろ劇場で観てみて!」と伝えたくなる作品でした。渋谷UPLINKでまだ上映中ですし、関西など地方での上映も始まるようですので、ぜひ!

映画『LISTEN リッスン』公式サイト イベント・上映

 

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今日はそんな感じです。

チャオ!