インターネットの備忘録

インターネット大好きな会社員がまじめにつける備忘録です。

わたしのスーパースター

 春から立ち上げる予定だった新規事業が、ある判断から急遽取りやめになって、ずっと心の奥がイガイガしていました。頭の上に大きな石が載せられているように重苦しくて、膝から下がヘドロの中に埋まってしまったように身動きが取れなくて、やる気を失って、なんとなく自暴自棄になってしまっていました。そしてそんな自分が、とても嫌でした。

わたしは仕事ジャンキーなので、仕事を通じて興奮したりときめいたり、飛び上がるほど喜んだり、泣いたり笑ったりしたい。両手を上げて「やったー!」って言いたい。今までずっとそうしてきたし、それで見つけた喜びや人間関係は、わたしがお墓に持っていける、数少ない宝物だと思っています。

そのためには、全力で取り組めることをしたい。そう思っていたのに、自分の7割程度で出来る仕事を「上手に回す」ことに妥協してしまっていて、しかもそれにいろんな理由をつけて、自分で受け入れていることが、とても嫌でした。

諦めること、変化を避けることはとても心地がよくて、あたたかいプールに浮かんでいるようでした。以前、絶望や諦めについて、

「このまま力を抜いたら、気持ちよくこのぬるま湯のなかに飲み込まれて、スッと溺れ死ねるんじゃないかな?そしたらこんなに必死で泳がなくていいんじゃないかな?」

と書いたことがあるのですが、まさにこういう気分で「まあ、死にはしないんだろうし、こんなもんじゃない?」と思いながら、このまま諾々と歩いていけばいいかな、と思ってしまっていました。

 

 でも、ある再会がありました。再会というか、まだ直接は会えていないんですが、ずっと尊敬して憧れている人がいて、彼との再会の約束が、わたしにもう一度、背骨を刺してくれました。

4歳ほど年上の彼とは、知り合って10年近く経つのですが(彼について2008年にこのブログで書いた記事があったのでそれにも驚いたんですが)、初めて会ったとき、彼はある会社の事業部長で、わたしはそこに提案を持っていった、取引先の単なる一社員でした。

お互いの会社が、渋谷にありました。そして当時のわたしたちは、それぞれ東横線沿線に住んでいて、ある夜、終電で偶然乗り合わせ、さらに偶然なことに、その電車が、人身事故で停まってしまったんです。どうせタクシーで帰るんだし、どこかで飲んで行きますか、と誘っていただいて、本当に短い時間、軽い夕食とお酒を過ごしました。それから半年に1〜2回、最近では1〜2年に1回くらいお会いして、主にランチを一緒に食べて、近況報告をする程度の付き合いです。

彼はわたしのはるか先を歩いていて、どんなに努力しても絶対に追いつけないし、それでもたまに振り返って「最近どうよ」と言ってくれることが、嬉しかった。同じ業界に長くいるもの同士、許せないこと、やってみたいこと、悩んでいることに共通点が多く、ほんの1時間でも、毎回いろんなことを教えてもらえる大切な時間です。

最後に会ったのは去年の秋で、わたしは大きなプロジェクトをハイ達成した直後でした。とても楽しい仕事だったので、その話をひととおり説明したあと、「面白い仕事してるじゃん。お前がずっとやってきた仕事にも通じてるし、いま、いい顔してるもんな」と笑ってもらって、ああ、わたしはこの人にこうして褒められるのが、本当に好きなんだな、と、強く感じたのを思い出しました。

 

心から尊敬する人が、わたしが信念を持ってやっていることを、10年近くも、ずっと知ってくれている。そういう人と、久しぶりに近況報告を兼ねて、会おう、ランチじゃなくて、夜にたくさん話そう、という約束をして、とても嬉しかったのですが、そのとき、わたしは彼の前に恥ずかしくない状態で立てるだろうか?と思って、ハッとしてしまいました。

 

たぶん、今はダメなんですよね。今の自分で彼に会うのは嫌だと思って、そう思ったら本当につらくなってしまって、本当にこのままじゃダメだ、と思えました。

東京事変に「スーパースター」という曲があります。 

私はあなたの強く光る眼思い出すけれど
もしも逢えたとして喜べないよ
か弱い今日の私では
これでは未だ厭だ

という歌詞があって、本当に、こういう気持ちになって、ちゃんとしなきゃ、と、はっきりと強く思えて、救われた思いでいます。こういうふうに自覚はあるのに、他者からによってやっと自分を律することができる、というのは、なんとも意志が弱くて情けない話なのですが、こればっかりは、仕方がありませんね。

彼にこういう気持ちを話したことはないし、たぶんこれから先も絶対に言うことはありません。彼との関係は、常に成長や進歩を求められるもので、つらくもありますが、そういう人の存在が、仕事人としての自分を支えてくれているんだなと感じたので、忘れないように書いておこう、と思った次第です。

 

 毎回、彼とのやりとりを思い返すと恋みたいだなと思うし、共通の知り合いにもそうやって冷やかされるのですが、たぶん、こうやって仕事を通じて、恋に似た何かをして、そのたびに自分を前に進ませるきっかけをもらっているんだろうな。何しろがんばります。がんばるぞ。

今日はそんな感じです。

チャオ!