インターネットの備忘録

インターネット大好きな会社員がまじめにつける備忘録です。

原始的な欲求によりそって技術は浸透してきた/安田理央「痴女の誕生」読んだ

タイトルちょっと極論ですが。

まず書籍の簡単なご紹介。

本著はライターでありアダルトメディア研究家としても活躍していらっしゃる安田理央さんが、「美少女」「熟女」「素人」「痴女」「男の娘」、5つのジャンルに区切って、アダルトメディアと、そこに登場する女性像、さらにそれを求める男性たちについてまとめた一冊です。アダルトビデオのタイトルとか、いわゆる行為中の台詞とかも出てくるので、耐性ない人はちょっと身構えてから開いてくださいね。

で、ここまでが前置き。

さて、読み終えて思ったんですが、あの、これ本当に、このジャンルに興味ある人にとって教科書的に必携な名著だと思いました。

「外からヒキで見ておおよその歴史をまとめた」タイプの書籍ではなく、ど真ん中で活躍していた人が、ものすごい情報量とともにリアルな経験から得た視点をフル活用して書ききった、という感じで、説得力と情報量が、スゴい。

一般的な(一般て何なんですかね?)女性よりはアダルトコンテンツに馴染みがある方とはいえ、わたしは女性で「ああこの女優さん、なつかしい」というのはそんなになかったんですが、それでも十分、読み応えがありました。それと、テレビで見かけたりとかAV女優のアイコン的にお名前をよく聞く女優さんも出てきて、彼女たちの何がすごかったかが記述してあるので、そこも非常に面白かったです。

本論、「痴女」という、初めは風俗店「乱コーポレーション」所属の風俗嬢が産んだスタイルが知名度を得て浸透、そして拡散していった結果、今となってはもう「ジャンル」ではなく「コース料理の一品」としてコンテンツに取り込まれていった経緯とか、「素人」というジャンルの勃興と、モバイルメディアの発達がリンクしていたり、目からウロコです。「女王様」と「痴女」ってイメージ的に同じものかなくらいの頭しかなかったんですが、全然、違うんですね!

さらにそこへ複線としてのレンタルビデオ、セルビデオ、そしてオンデマンド配信など、「アダルトコンテンツ」のデリバリールートが変わってきた歴史が絡めてあります。VHSビデオデッキの普及とアダルトビデオの関連性はよく話に挙がりますが、その補強をするように、本著で語られる様々なデバイスの発展とコンテンツの変遷は連動し、その流れを俯瞰で見ることが出来て、本当に面白かった!

 

で、読み終えてさあ感想を書くぞと思って書き始めて思ったんですが、先日読んでいたこちらの感想と、わたしが書こうと思った感想の着手ポイントが全然違っていて、これも面白いなと感じました。

わたしにとってのこの本は、コンテンツとデバイスのゆるやかな共犯関係を時代の流れを踏まえて浮き彫りにする検証本のように感じたのですが、また別の人が読むと、きっと違う部分に語りたいポイントがあって、いろんな人の感想を読んでみたくなる。
そしてそれは多くの人の「自分語り」の素地になりうるほどこの本の背骨がどっしり通っていて、読み終えたあとに「えーでもそれは違うんじゃない」みたいな違和感がなく、むしろ物足りない、もっと読みたくなって「そうそう、そうだよね、じゃあこれってどうなの、ここも掘り下げて欲しいんだけど」と思わされるような、頑健な情報がまとめてあることの証拠なんだろうと思います。

何度も読み返して、いろんな人と語り合ってみたいと思える一冊でした。あと、わたしの好きなハマジムとかカンパニー松尾監督の名前も出てきて、楽しかったです。

面白かった!ご興味あれば、ぜひ、ご一読ください。

今日はそんな感じです。

チャオ!