インターネットの備忘録

インターネット大好きな会社員がまじめにつける備忘録です。

「だいじょうぶマイ・フレンド」

村上龍黒歴史といわれる「だいじょうぶマイ・フレンド」。

だいじょうぶマイフレンド [DVD]

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だいじょうぶマイ・フレンド (集英社文庫)

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実際の映画と、原作の小説はどちらも観ていないのですが、同タイトルの主題歌が加藤和彦さん作で、いい曲なんです。


だいじょうぶマイ・フレンド 加藤和彦('83)

映画に出演されている渡辺裕之さんや広田レオナさんが歌っているVerもあって、豪華。先日から元気があまりなかったんですが、この曲のサビを口ずさんで過ごしていたら、少し元気が出てきました。あと熱いお風呂や旬の果物など、あたたかいアドバイスを実践してみた効果が出ているのだと思います。ありがとうございます。

それで、なぜ急に加藤和彦さんのことを思い出したのだろうと思っていたんですが、いま読んでいる本「編集者という病い」に安井かずみさんのエピソードが出てきたからでした。安井かずみさんは「だいじょうぶマイ・フレンド」の作詞をされていて、作曲・歌っている加藤和彦さんの奥様で、当時の女性の憧れの的であったそうです。この安井かずみ加藤和彦コンビでは本当にたくさんの名曲があって、竹内まりや「不思議なピーチパイ」や飯島真理愛・おぼえていますか」なんかが有名でしょうか。加藤和彦さん作曲ではないけれど、和田アキ子「古い日記」も安井かずみさんの作詞ですね。

古い日記

古い日記

 かっこいいな……。

 

さて、「編集者という病い」自体は見城徹さんの交流関係自慢というか過去の栄光自慢というか、書いてあることがバラバラで何が言いたいかよくわかんない感じですが、それぞれのパートの内容は、非常に興味深いです。時代の真ん中を疾走してきた濃厚で強烈な人なんだなというのがよくわかる一冊。尾崎豊さんとのエピソードは、壮絶でした。 

編集者という病い (集英社文庫)

編集者という病い (集英社文庫)

 

話を戻して、「編集者という病い」を読んで安井かずみさんのことを思い出して、加藤和彦さんのことを思い出して、ああそういえばそんなご夫婦がいたな、みたいなことを調べたり読んだり考えたりしていて、素晴らしい作品の舞台裏にある深い陰、みたいなものを思いました。 安井かずみさん・加藤和彦さんご夫婦は作詞家・作曲家夫婦として公私をともにし、華やかで理想的な生活、上質な暮らしの体現者のように言われていますが、実際の二人の間には「やせ我慢」のようなものがあり、安井かずみさんの大親友であった加賀まりこさんは「”素敵の自転車操業”をして演じつつ、生活は虚飾めいて見えた」と語っていたそうです。

見城徹さんの著書を読んでも、どうしようもない渇望のようなものを感じます。彼がこの本で「表現と表現者の掟であり、行動規範だと思います。」と取り上げたランボーの「地獄の季節」の一節、

秋だ。俺達の舟は、動かぬ霧の中を纜を解いて、悲惨の港を目指し、焰と泥のしみついた空を負う巨きな街を目指して、舳先をまはす。

『別れ』小林秀雄

にあらわれるように、安全な港ではなく、悲惨の港を目指すことを是としている。

なんでそこまで、どうしてそこまで、と思ってしまうほどに自分を追い詰めて、彼らは何を渇求していたのか。それを知りたくて、調べていきながら素晴らしい作品に触れ、触れて感じたことを見つめなおすことではじめてその渇求の輪郭が、少しずつわかってくるのかもしれません。

そして見ていて痛々しいほどの生き様がもたらす作品の素晴らしさは、その舞台裏の凄惨さを感じさせないもので、それもまた、プロの仕事なんだなと感じます。

わたしのように凡庸な人間でもそれなりの悩みがあり、渇求があり、その先になにかを表現したいと願うことがあります。わたしの悩みは彼らの苦悩とはとても比べられるものではありませんが、その葛藤を想像することはできる。そしてその渇求に少なからず共感を覚えるのも事実です。そういったものもぜんぶひっくるめて、「だいじょうぶマイ・フレンド」と口ずさんでいこうと思いました。

 

いろいろありますが、なんとかやっていきましょう。ね。

今日はそんな感じです。

チャオ!

安井かずみがいた時代 (集英社文庫)

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