インターネットの備忘録

インターネット大好きな会社員がまじめにつける備忘録です。

「隠居系男子的。〜灯台もと暮らし運営会社Wasei代表の鳥井弘文が初めて語る自分のこと〜」読んだ

献本いただきまして読了。

ちょっとめんどくさいことを、書きます。 

わたしのブログを読んでいる方で、どのくらい鳥井弘文という人について知っている人がいるかが不明なので、ひとまず最初に、この本について、を説明します。

鳥井弘文、という人について

話を聞かれているのは、「鳥井弘文さん」という人です

鳥井さんは「灯台もと暮らし」という媒体を運営している株式会社Waseiの代表であり、「隠居系男子」というブログの運営者です。

今まではあくまで黒子的に、「才能ある人や、面白いと思うモノコトを紹介する」側に立つスタンスだった鳥井弘文さんが、初めて自分のことを語る、という主旨のインタビュー本です。

くいしん、という人について

聞き手は「くいしん」さん。

「天井裏書房」というブログの運営者で、元々はNSCでお笑い芸人を志し、音楽雑誌の編集を経て今はWeb屋さんをやっている方。

天井裏書房

自己紹介【2014年1月版】

↑くいしんさんについては、こちらがわかりやすいと思います。

その二人が出会い、くいしんさんが鳥井さんに興味を持ち、今まで語られてこなかった「鳥井弘文という、彼自身」についてを聞き出していく、という仕立てです。

「隠居系男子的。」書評

 読了してまず、とてもリアルなインタビュー本だ、と思いました。

20代の彼らがインターネットとどう出会い、向き合おうとしてきたか。自分たちの世代をどう捉えていて、何を思い、これからどう活動していこうと思っているのか。何を楽しいと思い、どんなことについて抵抗を感じているのか。

本来であれば、「彼らの世界」で閉じたまま表には出てこない情報が、対談という形式のもと開示されていて、とても興味深く読みました。賢く老練であるように見える彼らであっても、同時に非常に柔らかく繊細な感情を今も抱えていて、その危うさ、みずみずしさ、というものに触れられたように感じました。

とはいえ、この二人についてまったく知らない人でも面白く読めるかどうか、嫌な言い方をすると、「支払った価格分楽しめるかどうか」で言うと、わたしにはそれを保証できる自信がありません。それは、二人についてまったく知らない人へ向けた前提共有の部分が弱く、あくまでファンブックの域を出ていないからです。

文末、鳥井さん自身がこのインタビュー本を出すに至った経緯について、こんなふうに書いていました。

 

それは、この時期の自分にしか語れなかったことがあると思ったからです。現に、いま同じことを語れと言われても語れない。あの 1 年目の激動のタイミングだったからこそ、語れたということも多いです。

 

おそらくここで書かれている「1年目」というのは「起業して1年目」ということだと思うのですが、これは実際、事実だと思いますし、この先3年、5年後に、この内容でリリースできたかどうかでいうと、ちょっと想像がつかない。そのくらい、良い意味で稚拙で幼く、危うい感じが表れた一冊だと思います。

インターネットにおいて、洗練よりも拙速が良い効果をもたらす瞬間、というのは、きっとあります。めっちゃあるかというとそうでもないんですけど、ゼロではない。わたしはこの電子書籍が、数少ない拙速であることが良い効果をもたらす一冊であってほしい。

献本いただいてその日のうちに読了した瞬間、ここがダメだ、もっとこうすべきだ、という長い意見を、くいしんさんに送りました。感じたモヤモヤから意見をまとめ、例示を考え、それを相手に失礼ない形の表現に落とし込んで伝える、という、死ぬほど面倒くさく、後々の関係にネガティブな影響をもたらす可能性があるようなことを、なぜ自分でしてしまったのか、を考えたとき、わたしはこの二人に対しての期待が、その恐れを上回ったのだ、と感じました。

彼らはもっともっと、面白いものがつくれるはず。だからこの書籍を読んで感じたモヤモヤを、知り合いの、身内のなあなあとして心の中に収めることは、彼らに対して不誠実なおこないである。そんな言い訳をして、批判を送りました。

とはいえ、彼らのことを知っている人たちにとっては、非常に面白く、楽しめる一冊になると思います。また、今まで黒子に徹してきた「鳥井弘文」という人が、自分自身について語る、という新しい試みに挑戦したことで、彼の今後のブランディングにどう影響するのか、とても注目しています。

 

 幸いにも彼ら二人は、自分で語れる媒体を持ち、自分で語れる言葉も持っています。今後、この電子書籍を起点とした新しいブレイクスルーがあるかもしれない。もしかしたらわたしがこのエントリで書き連ねたことは杞憂かもしれなくて、前提なんて共有できていなくても、爆発的に盛り上がるかもしれない。それでもわたしはわたし自身の誠実さをもって、彼らに対して真摯に向き合っていきたいと思っています。 

その前提を踏まえて、ぜひ読んでみて欲しい一冊です。Kindle端末だとある程度は試し読みが出来るようなので、そちらからでも。

 

今日はそんな感じです。

チャオ!