インターネットの備忘録

インターネット大好きな会社員がまじめにつける備忘録です。

理由がなくたって愛されていいのだ

「ほぼ日」がジャスダックで上場承認を受けたとのことで、久しぶりにサイトを見に行った。(おめでとうございます)

ほぼ日刊イトイ新聞 

わたしにとっての「ほぼ日」は、「いっときめちゃくちゃ夢中になったけれど、自分の価値観の変動によって気持ちに距離ができ、一時はやや嫌悪感を抱いたりもしたが、絶対にいなくなってほしくない存在」くらいの感じ。元カレかよ。ともあれ、ひところはとても発信内容に影響を受けたし、ほぼ日手帳を何冊もリピートしたし、以前ほどではないけれど、今でもたまに見に行っては「いいなあ」と思っている。そんな「ほぼ日」に、「今日のダーリン」というコンテンツがある。

これは「ほぼ日刊イトイ新聞」の主宰である糸井重里さんが毎日、ほぼ日のトップに書いているエッセイで、毎回だいたい1000文字前後の、軽めなもの。内容はその日によっていろいろで、基本的には糸井重里さんの身の回りに起きたことを書き留めている感じ。さっと読めて、なんとなくホワンとする、そういうエッセイ。毎日1000文字、言葉のプロとはいえ、これを続けるのは、すごいことだと思っている。

わたし自身でいうと、2016年は、日記を毎日つけていた。けれど、わたしがただの社会人ということを差し引いても、文章に書こうと思えるような大事件は毎日、そうそう起こらない。今日も昨日のコピーアンドペーストだったな、みたいな日の方が、たぶん多い。だからといって、毎日書いている手前、日記までコピーアンドペーストでいいだろう、というわけにはいかない。(いいのかもしれないけど)

そうすると、どうなるか。自分の中に絶え間なく何かをストックするためにアンテナを尖らせ、心をやわらかくしてキャッチし、言葉を生み出す鍛錬をし続ける必要があるのだ。これはもう筋トレのようなもので、毎日やるのはとても大変だし、もう無理だよ〜と思ってサボりたくなる日もあるが、続けてみると「アレッ!」と思うほどの効果がある。

それは不思議な感覚で、たとえが難しいのだけれど、自分の中に「書くための回路」が通ったような感覚が発生する瞬間が、確かにある。そしてその「書くための回路」が開通すると、目の前にある何気ないこと、身の回りに起きるささやかな出来事をちゃんとキャッチして、言葉へ変換できるようになる。見えているものの解像度が上がり、視界がクリアになったような気がして、同じように見えてこんなに違う、こんなことやあんなことがあったのに、今までのわたしは見落としていたのだな、という状態になる。

つまり何が言いたいかというと、言葉のプロである糸井重里さんが、毎日書き続けているこのエッセイ、毎日更新されるからってつい見落としがちなのだけれど、読まない理由はないよ、ということ。

 

で、ここからが本題。

つまり2月14日、バレンタインのほぼ日、「今日のダーリン」で書かれていたことに、はっとした話。

ざっくりいうと、糸井重里さんが長年飼われている「ブイヨンちゃん」というジャックラッセルテリアについての話。ブイヨンちゃんは、もうだいぶおばあちゃん犬なのだけれど、小さいときからずっと犬の友だちがいないのだという。「他の犬に対してのふるまいがよくない」し、最近では「けんかはしないけれど、犬を無視をするようになった」。

「そんなこんなで、うちの犬は、犬のともだちのいないまま、老犬になってしまった」そうなのだけれど、それを飼い主である糸井重里さんは「それはそれでそういう人生だったんだ」と思って、納得をしている。そして、「そんなふうな、ぜんぶ、まるごとが、うちの犬で、もっといいこになる必要もないし、この先も、ずっとこのままでいいと思う。」と、「なにかできるから愛されるわけじゃない、っていいことだ。」と締めくくっていた。

これを読んだときに、バレンタインデーという「恋人の日」に公開されるエッセイとして、すごくいいな、と思った。バレンタインデー前後には、恋人に何をした、何をしてもらった、という話題がとても増える。わたし自身も同じで、バレンタインデーには毎年、そのときの恋人に贈り物を準備したり何か喜ばせるような計画を立ててきたし、今年もそうした。お祭りごとなので、身近な人たちの間でも、どんなチョコレートをもらったか、あげたか、それは手作りだったか、ブランドものだったか、有名ではないけれど気の利いたセンスのあるものだったか、どうだとか、いろんな品評が出そろう。そこに自分のこだわりを盛り込んだり、相手の「喜びどころ」を見出すのは、お祭りごととして、とても楽しいものだと思う。

なのだけれど、恋人への愛の本質としては、「こういうことをしてくれたから、してくれるから、好き」というものではなくて、できなくたって愛してしまうから愛で恋人なわけで、そこに正確な理由なんて、きっとない。あったとしても、そんなのはあとづけでしかない。理由なんて、なくたっていいのだ。

まあこれは恋人に限らず、家族とか友人とか、そういうくくりに入れらない関係性の誰かだとか、とにかく「自分にとって特別な人」のすべてに通じることなのだと思うけれど、そういうのをバレンタインデーにサッと上げる糸井重里さんは、やっぱりいいなあ、と思ったのでした。

 

ブイヨンちゃんについては、このへんとか読むといいです。かわいいよ。

ほぼ日刊イトイ新聞 - Say Hello! あのこによろしく。

ブイヨンの気持ち。 (ほぼ日ブックス)

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ブイヨンの日々。 (ほぼ日ブックス)

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今日はそんな感じです。

チャオ!