インターネットの備忘録

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永田カビ「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」読んだ

今風の「やってみた」的なタイトルが、あまりにも軽すぎると思える一冊。

さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ

さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ

 

※追記 Kindle版、前倒しで発売されるそうです!読み返し用にこっちも買おう 

さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ

さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ

 

※追記 finalvent先生のブログに引用していただきました 

[書評] さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ(永田カビ): 極東ブログ

高校卒業後、鬱と摂食障害に苦しみ、家族や他者との関係に悩んだ筆者が大きな一歩を踏み出すまでの10年を描いた漫画です。もともとはpixivで「女が女とあれこれできるお店へ行った話」として公開され話題になっていたのですが、書籍化ということで、発売日当日に書店へ走りました。

最初に読んだとき、わたしがもっとも心を掴まれたのは、彼女が「レズビアン風俗」というものを探すきっかけになった、「自分は性的なことに興味がない、と思っていたけれど、そうではなかった。無意識にブレーキをかけて、考えないようにしていた。そしてそのブレーキは、母の形をしていた」という部分でした。そして彼女は自分の興味にしたがって風俗店を検索し、行動してみることで世界が広がり、呼吸が楽になった、と書いていたのです。

彼女の場合はきっかけが「性的なものへの興味」でしたが、わたしも無意識のうちに「こんなことしたら親がどう言うか」というブレーキを、自分にかけ続けていました。もちろんそれは良い作用もあるのですが、大きな反作用もあった。たとえそれが自分の本当に好きなことであったとしても「親が嫌がるから、この選択は諦めよう」と思ってしまうのです。それに気付くことができず、わたしはその2つの自分の間で長い間、行ったり来たり、ウロウロとしていました。親が喜ぶだろうと思って本心ではないことを選ぼうとすると、心のどこかが強く抵抗をしめし、自分の中で整合性が取れなくなるせいで、混乱するのです。そういう状況になっているという自覚がないため自分の中の混乱をうまく制御できず、気分屋のように態度をコロコロ変えたり、感情のアップダウンが激しくなって、そばにいる人を傷付けたりしていました。

そのことに気付き、「これはなんか違うぞ!」と思えるようになるまで、だいぶかかってしまいましたが、そのことを、こんなにもわかりやすく書いてくれた漫画があったなんて、と、初めてこの漫画を知ったときには、自分の過去を振り返るような気持ちで読みふけりました。

永田カビさんのすごいところは、自力でそれらに気付き、改善しようと試みているところ。その過程を、きちんと書き残そうとしているところ。そしてそれを、図にしてわかりやすく示せる才能だと思いました。

イースト・プレスのWebメディアでダイジェストが読めるのですが、

matogrosso.jp

この第2章部分、

「親から認められたい がんばらなくても許されたい」

「それだけが原動力で動いていた」

「『自分はどうしたいのか』がわからなかった」

「考えられなかった」

部分の、スポットライトが自分ではない人たちに当たってしまっている描写が、まさに自分の心境そのもので、本当に驚きました。わたしも感じたことのあるこの感情を、こんなに一目瞭然な絵にできるものなのか、と。

ここでも何度か書いていますが、一時期、両親と絶縁状態になった時期がありました。両親のことは尊敬しているし、大好きなのに、一緒にいると、ただ息苦しく、傷付けられ続けているような気がして、親不孝だと言われても、いったん逃げるしかない、と思ったのです。そのときに感じたのは、彼らのそばにいる限り、わたしは彼らの反応を必要以上に気にしてしまうし、気にしてしまう以上、わたしは自分の人生を生きることができない、ということでした。

その後、わたし自身の回復もあり、改めて両親と交流を持とうとしたタイミングで、やはり以前と同じような感じで揉めかけたことがありました。そのときわたしが叫んだのは、「わたしがお父さんの思うように生きていなかったとしても、わたしを否定しないでほしい」という言葉でした。両親の思うように生きられなかったことを申し訳なく思っているけれど、生まれてしまって、自分の人生を、自分で生きなければいけない以上、両親の望むように生きるのは、わたしにとっては難しいことでした。そしてそのことで自分を責め続けるのは、もういやだ、と思ったのです。

その言葉が届いたのか、どうなのか、分かりませんが、今は両親と適切な距離を保ちつつ、友好的な関係を持てています。こんなふうにしか親との関係をうまく築けない自分はダメな人間だ、と思っていたのですが、もう、しょうがないな、とも思います。みんなが普通にできていることが、わたしにはできない。そうして自分にがっかりするのは本当に辛かったけれど、もう、しょうがないんです。それはそれで、やっていけばいいんだから。よくも悪くも開き直り、という感じではありますが、永田カビさんも同じように自分を取り戻し、開き直りを見せていく様子に励まされましたし、この本の最後のページをめくったとき、わたしも大きく空気を吸うことができたような気持ちになりました。

 

本作のタイトルは「レズ風俗」となっていますが、メッセージの本質は、彼女が自分自身を生きようとするまでの物語であり、他者とのコミュニケーションへ向けて手を伸ばそうとする、戦いの記録です。彼女がこれを描いてくれたことでわたしは救われたような気がしましたし、彼女のこれからを、心から応援したいと思っています。

 

※最後に補足です

「pixivで読んだからいいかな……」という方(わたしも最初ちょっとだけそう思ったんですが)

 という言葉の通り、書きなおされていてかなり見やすい&読みやすくなっているので、絶対に買ったほうが良いと思います、ということを書き添えておきます。わたしも買ってよかった、と思ってますし、貸す用と繰り返し読む用でもう1冊買おうと思ってます。

 

今日はそんな感じです。

チャオ!