インターネットの備忘録

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店と人との共犯関係/北山珈琲店へ行ってきた話

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「すごいお店がある」ということで行ってきました、東京の東側、入谷まで。

すでに行ったことのある人と一緒だったので、ある程度は安心してたのですが、事前にこれらを読んでみたら「わたしごときが行っていいんだろうか……」とだんだん心配に。

@nifty:デイリーポータルZ:コーヒーを飲むこと以外は、許されない喫茶店

ウエスタン北山珈琲店…上野 [カフェ] All About

伝説の珈琲店「北山珈琲店」で究極の珈琲を飲む - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

とにかく「主役はコーヒー」というお店ということなので敬意と謙虚さを忘れなければ大丈夫だろうと心構えしいざ入店し、わたしはマンデリンのアイスコーヒーを。

透き通った氷と深くて濃い茶褐色がすごくきれいで、なんというか、すごいものを飲んだ、という感じでした。味はもちろんコーヒーなんですが、嫌な感じの苦さや後に残る感じがなくて、それでも苦味や香りやいろんな味があって、飲んだあとは口腔とか喉のあたりにずーっといい香りが漂ってる感じ。コーヒーを一口飲んだあとにお水を飲むとまた口の中でふわっと感じが変わって、お酒っていうかウイスキーとかスコッチ飲んでるときみたいなだあと思いました。

最初はブラックで、次にミルクを少し、またミルクを足して、最後にコーヒー用のシロップ(あれも普通のシロップと違ってちょっと茶色くて、甘いんだけどほんのり風味がついていて、なんだったんだろう)みたいな段階でちょっとずつ飲み分けたんですが、「えっ」て声が出るくらい味が変わって、とても興奮しました。一緒に行った人がオーダーした「雫」も飲んだ瞬間「フフッ」て笑っちゃうくらいの衝撃で、なんというか、カルチャーショックです。

そのあと上野で飲もうってことで歩きながら向かったんですが、道すがらずーーーっと、ずーーーっと「あんな味になるなんてどうやっても淹れ方が分からない」「あれはもうコーヒーじゃない、別のもの」みたいな話をしてて、こういう興奮とか、「なんじゃこりゃ!」みたいに騒然とした気持ちにさせられる経験ってあんまりないから、本当に行ってよかった、と思いました。

 

で、北山珈琲って「雑談禁止」とか「待ち合わせ禁止」「撮影お断り」みたいに貼り紙が多くて、注文の多い料理店的な感じだったので、ちょっと怖かったんですよね。

でも行ってみると、確かにあれは飲んだ瞬間びっくりしてしまう味だし、あの味を出すためにどれだけの研究と努力があったのかと思うとグッと来るし、注文やむなし、という感じです。味もすごいんですが、コーヒー以外の気配りもきめ細かくて、セットを頼んだ友人には口ゆすぎに……と薄いコーヒーが出てきたり、お水の氷もアイスコーヒーと同様透き通っていてマメに注ぎ足してくれるし、ミルクのピッチャーが乗った小皿には氷が沿えられていて、ミルクがぬるくならないように配慮がしてありました。そこまでしてるお店、そうそうないですよね。ああ、ここまで考えていろいろしてくださっているなら、こちらもちゃんと背筋を正して、分からないなりでもしっかり味わおうと思いました。お店側が覚悟を決めてひとつの道を追求しているなら、その覚悟に客側も寄っていかないとあの空間は成立しなくて、それが稀有なものだからこそ、50年近くも続いているんだろうと思います。

今ちょうど太田和彦さんの「居酒屋を極める」を読んでるんですけど、この本も「なんでそこまで客が店のことを考えなきゃいけないんだ」ということがひたすら注意書きとして書かれています。そういうのがめんどうだなと思う人もいるとは思うんですけど、「場」っていうのはそこに関わる人間全員が作っていくもので、そういう楽しみというのは良いものだなーと思いました。イベントなんかでも同じですね。素晴らしい「場」を作りたいなら、集まった人間どうしでベクトルを揃えて、全員でいい方向を目指すことでしか生まれないんだなーというか。

 

ということで週末に素晴らしい経験をしたよという話でした。

日常からはみ出るような体験をするのは、本当に楽しい。なにごとも興味を持ってこつこつ調べていると、何かのきっかけで急にフワッと経験値とか知識が増える瞬間があって、でも知識の素地がないと、この爆発はありえないんですよね。こういう気分は最高に刺激的だと思います。

 

今日はそんな感じです。

チャオ! 

居酒屋を極める(新潮新書)

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吉田類より太田和彦派です。