インターネットの備忘録

インターネット大好きな会社員がまじめにつける備忘録です。

酸欠になると、本屋へ行く

仕事が詰まってきたり人と会ってばかりで考えを煮詰める時間が取れなくなると、だんだん酸欠の金魚みたいな気持ちになってくるので、そういうときは急いで本屋へ駆け込みます。

 いくつか好きな本屋があって、丸の内の丸善、渋谷の丸善ジュンク堂、六本木の青山ブックセンターみたいな大型書店から、松陰神社前nostos books、代沢の気流舎、下北沢B&Bまで(三茶エリアに偏ってるのに深い意味はなく長く住んでたせいです)、とにかく急いで駆け込むと、深呼吸が出来る気持ちになります。

なんでか理由はよくわからないし、行ったところで「本棚をコマンド+Fしたい…」と思うときがなくはないんですが、紙の感じ、光の反射とか、ずらっと平積みされた表紙の顔とか、探してないのに飛び込んでくる何か、がすごく好きで、それはたぶん脳みそが行き詰まると「自分で探してないけど飛び込んでくる情報」みたいなものに飢えはじめるせいなんじゃないかなと思います。 

紙への憧憬

社会人のはじまりは地元の小さな古いデザイン会社で、組版がまだ現役で使われているような会社でした。部長は還暦間近のおじいちゃんだし、専務は社長の奥さん、70歳間近なのにバリバリ校正をこなす烈女で、仕事の仕方をよく怒られました。

赤字の入れ方がわかりにくいと怒られたし、女だからってだけの理由で朝早く来て全員のデスクを拭けとかお茶を入れろとか言われるのは納得いかなかったし、失敗に嫌味を言われてトイレで泣いたりもしましたが、社員みんなのおかあさんみたいに、よく面倒を見てもらいました。

街の工場に色校正を頼んであるからそろそろ取りに行けと言われるのが、最初は怖かった。でも、大きな機械がガシャガシャ言うような印刷工場の奥に声をかけると、作業着姿に怖い顔のおじさんが「今回はきれいに色が出た。晴れの日が続いたからな」と言って、刷り上がったばかりの色校正を広げて見せてくれるのがうれしかったことを思い出します。受け取ったばかりでインクの匂いがする色校正をお客さんの前で広げると、「わあっ」と声をあげて喜んでもらったときのこととかも。

おじいちゃん部長から、「印刷物というのは、こうやっていろんな人の手をかけて刷り上がって、いろんな人の手を渡ってお客さんの手元に届く。あなたがもしその途中で手を抜いたら、あなたの手前と、あなたの先にいる人たちの努力を無駄にするとことになる。そのことをぜったいに忘れてはいけないよ」といつも言われて、それが仕事をする上での基本姿勢となりました。

あなたが「このくらい、まあいいか」と思って手を抜き見落とした誤植はそのまま紙に刷られてしまって、二度と取り返しがつかないんだよ、とも。

コンテンツの手ざわり

みたいなことを、急に思い出しまして、どういう連想ゲームを経たんだろうかと考えていたんですけれども、わたしが何かコンテンツを作ろうと思うとき、やたらと「手ざわり」や「関わる人たちの誇り」みたいなものにこだわるのは、この経験が根強いのかもしれないなーと思いました。

締切とかスケジュールにピリピリして強い口調になってしまったり、「出してみてダメなら引っ込めよう」の軽さに抵抗感を覚えたり、「一度表に出してしまったら取り返しがつかない」ことへの恐怖みたいなのがどっしり重しをかけていて、くそ真面目にちゃんとやろうよと細かいところをガタガタ言ってしまうんですが、なんかもうこれ、一生治らない気がする。

 そういう頑なな自分はめんどくさいしヤダなって思ってるんですけど、まあこれも個性ってことで、仕方がないもんだと思って、何卒お付き合いいただければ幸いでございます。

本屋が好きなのも、そういう「一度出してしまったら取り返しがつかない」ことに向き合ってる人たちが、真面目に作ったものがずらっと並んでるから、安心して時間を過ごせるのかもしれないですね。

何が言いたかったかよくわかんなくなっちゃった。まあそんなこんなで今日は仕事の帰りに本屋へ寄って、大量にいろいろ買ってきたのでした。

やっぱり紙の本はいいですなー。

 

今日はそんな感じです。

チャオ!

おせん (新潮文庫)

おせん (新潮文庫)

 

☆ちょっと前に読み終えたんですが、これ超よかった。女性の弱さ、強さ、たくましさ、いやらしさ、出てくるヒロインはみんなきらきらぎらぎらしてて、生きてる「なま」の感じがします。こんなふうに生きたいな、と思いました。

短篇集だし、読みやすくておすすめ!