ずっとずっと楽しみにしていた映画「ハーブ&ドロシー」を観てきました。
秋の始め、夫に「こんな映画あるみたいだよ」と教えてもらい公開を待っていたのですがなんだかんだで観にいけたのは1ヵ月後。
とはいえまだまだ盛況のようでした。
もう観ている間じゅうニコニコしてしまい、上映が終わった瞬間に夫と顔を見合わせて「よかったねえ…」とため息をつかずにいられなかったので、感想を備忘。
「ハーブ&ドロシー」とは
「ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人」
http://www.herbanddorothy.com/jp/
マンハッタンに暮らすある老夫婦の半生を描いた映画で、彼らは30年間かけて、自分たちのお給料で手に届く範囲で精力的に芸術作品を買い集め、膨大なコレクションを築きます。
ただの一作品も売ることはなく、アーティスト本人と話をして直接買い求め、狭いアパートに詰め込まれたコレクションの山。
お二人の最高にチャーミングな人柄、本編の素晴らしさと並び、映画館の画面に映し出されるアート作品は、それだけで観る価値があると思います。
様々なところで絶賛されているので、映画そのものの細かいレビューはそちらにお任せし、個人的に心に響いたことを2点。
パートナーシップの素晴らしさ
元郵便局員のハーブと、奥様の元司書であるドロシー。
- 自分たちの収入で買える範囲で
- 二人で暮らす小さなアパートに収まるものだけ
この2つを判断基準に、自分たちがいいと思ったものをコツコツ買い続け、手を繋いで一緒にギャラリーや美術展に足を運ぶ、というエピソードを聞き、どんなご夫婦なのかなあと想像していました。
元々は芸術に疎かった奥様にアートについて教えたのはハーブ。
旦那様が欲しいと思う芸術作品を買うため、生活費を稼ぎ続けたドロシー。
ハーブのお給料はすべて芸術作品の購入にあて、ドロシーのお給料で生活していた、というのを聞いて驚きました。子供はおらず、猫と魚に囲まれて暮らす二人は「理想の夫婦」という枠を無視した、かけがえのない「人生のパートナー」という雰囲気。
冷静になってみれば、自分のお給料をつぎこんで、価値が出るかもわからない、そもそも売る気すらない芸術作品を執拗に買い求める夫についていける妻なんてそうザラにいるものではありません。
「夫だから」「妻だから」ではなく、一人の人間同士が、お互いに対する尊敬の気持ちと、その審美眼を信じ、自分もその世界を学ぶことで、このご夫婦でしか作れないコレクションが築かれていった様子がよくわかりました。
そういう意味でも、この二人はお互いがお互いでなければいけなかった二人なんだろうな、ということが伝わってきて、とても憧れてしまう関係性。
芸術を愛する一市民でいること
そこまでして執拗に探し求めた作品を
「地下鉄で持って帰れないからいらないと言った」
「アパートの天井につかえたので返した」
というシンプルさ。
「アートだ!」「ゲージツだ!」と肩をいからせるのではなく、いいなと思ったものを、持てる範囲で持つ、という潔さは、逆に
「いいものはいいと思えばいい」
「持てないものは無理をしてまで持たなくていい」
と気負わずにアート作品を購入する、という新しい視点を与えてくれました。
もともと美術展や博物館に行くのは夫婦揃って好きな方なのですが、正直、展示によってはピンとこないものもあります。それは自分が不勉強だからなのか、理解できない自分の感性が貧しいのかしら、などと考えたこともありました。
でも、いいものはいい、好きなものは好き、という気持ちに従い、心が幸せになったりドキドキしたりするものと出会うために足を運び、たくさんの作品を観るだけでも充分なのだと思えました。
来年以降も各地で上映するようです!
ハーブ&ドロシー 上映館一覧
http://www.herbanddorothy.com/jp/theater/index.html
わたしたちは東京のシアター・イメージフォーラムへ行きましたが、年明け以降、地方でも上映されるようです。都内の方は年内中には観にいった方がいいかも?
自分自身もそうでしたが、アートの予備知識がなくてもまったく問題ありません!ハーブとドロシー、素敵な老夫婦のドキュメンタリーとしても心が温かくなる素晴らしい作品ですので、ぜひ。
エンドロールのお買い物風景は、いま思い出すだけでもニコニコしてしまうくらい素敵でした。お見逃しなく!