インターネットの備忘録

インターネット大好きな会社員がまじめにつける備忘録です。

「あなたの代わり」がいない場所

「妻が病気の時、夫は会社を休むべきか?」大手小町
http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2009/1010/267719.htm


今回のこの質問に対しての感想は
「夫のひとは休めないならその状況と理由を妻に分かるまで説明してやれよ」
もしくは「妻のひとは後からぐちぐち言うならその場でもっと交渉してダメなら飛び出せ」
くらいしかないのですが(それまで夫が説明しても理解してくれなかったからかもしれないけど)
「社畜乙w」のあだ名をもつ外で働く女性の意見としてこんなのもあるよということで備忘。

仕組みをつくるのも仕事のうち

コメントでイラッときたのは、何があっても夫を仕事に行かせるのが
妻のつとめ!(キリッ)みたいに思っているひとが多かったこと。


我が家はわたしが外で働いてパートナーは在宅なので逆の立場ですが、
もしわたしが外で働く夫を持つ妻だとしたら、家族に何かあったときに
休めないような仕事の仕方をしている仕切りの悪い夫は追い出したい。
そんな仕事できないヤツなら家にいてもダメだろうけどさ。


与えられた要件を満たし(内容/期限ともに)その上でプラスアルファの価値を付けるのが
「いい仕事」だと思っているのですが、「いい仕事をする」のと
「仕事を抱え込む」のはまったく別です。


そのクオリティがその人以外でも出せるような「仕組み」を作ってこそが
ほんとうの「いい仕事」なのでは。(もちろん仕事の種類によるけど)


前のエントリでも書きましたが、会社・仕事において
「わたしの代わり」はいくらでもいます


そりゃいきなりいなくなられたら瞬間的に困る、っていうのは
あると思うんですけど、それでも回していくのが会社なんです。


今までたくさんのスタッフに関わってもらってきている中で、
ほんの1〜2回ですがいわゆる新卒さんや若いアルバイトの子の
「バックレ」というのも経験して、確かにほんとキツかった。
#余談ですけどバックレは仕事のフォローが大変なだけじゃなくて
精神的なショックがでかくて後々までものすごく自分を責めることになるので超しんどい


ただそういう経験を経て、いつこの人がいなくなってもいいように、
というのを考えるのが管理職の仕事であり、経営者の仕事である、と痛感して、
バイトやインターンを雇うときは(前提としてもちろん信頼して任せるんですが)、
いつバックレられてもいいように、予防策を取っておくのが癖になりました。


相手を信頼するのと、会社のことを考えて予防策を取ることは全然別なんです。
そして自分が使われる側として考えたとき「万が一、もしわたしが消えても
こうして会社は何とかなっていくんだろうなあ」ということに気付きました。


でも、それが正しい姿なんですよ。
その人がいなくなったら会社がつぶれる、とか、ほんとナイから。


もしあなたが仕事にめちゃくちゃ思い入れがあって、生き甲斐に感じていても、
明日いきなり行かなくなったとして、まあ数週間は大変でしょうけど
なんとかなっちゃうんですよ。だってそれが組織だから。


それは全然悲しいことなんかじゃないし、
そこに居場所を求めたらダメ、絶対。なんです。

いまやってることは細分化できる

で、「仕組み化」するってもちょっと分かりづらいので言い換えると、
「自分の仕事を小分けにして、誰でもやれる状態にしておく」こと。


ちょっと脇道にそれますが、なんでそうしようと思ったのか。


以前は300人くらいのネットベンチャーで働いていたんですが
当時まだ経験者が希少な業界だったため、ある程度の経験を積んで
それなり横のつながりができたらお誘いが増えて、
転職を考え始めたことがありました。


当時はそれこそ社畜まっさかり、仕事大好き仕事が趣味で(ほんとに楽しかったけど)、
1日15時間労働とかが普通な働き方をする、いわゆる「仕事を抱える人」だったので、
もし転職して今の仕事を誰かに引き継ぐとしたら、すげー大変じゃね?
ってことに気付いたのです。


そのときから仕事を少しずつ周りに振れるように準備して、
いつでも「抜けまーす!」と言えるようにしておこう、と心に決めて、
そのとき持っていた業務を整理分類するようにしました。


そうなると、だいたい下の分類で分けられるんですけど


「デスクワーク/人と話す・交渉する」
「手を動かす/考える・発案する」
「ルーチン/新規・突発」


(すごい大まかに分けてるので異論あるかもしれないですけど)
だいたい前者は人に振っちゃっても大丈夫な業務なんですよね。


人に振る場合は分かりやすい要件とマニュアル(までいかなくても
押さえどころがどこなのか、を伝えられるよう考えて整理しておく)
が出来ていれば引き継ぎ相手と最初の打合せをきっちり・丁寧にやって、
うまく軌道にのるまで2〜3回くらいイラッとするのを我慢したら、
あとは人に任せてしまうこと。


任せる相手にも、「いつか他人に引き継ぐときが来るから、いつ引き継いでもいいように
積み上がったノウハウや追加された決まり事は分かるようにまとめておいてね」までを
引き継ぐ作業のうちに含めて渡してしまうこと。


これの何がいいって、もし振る相手がいないとしても
こうして考えてみることで自分がやってることを俯瞰できるため、
目先のことにつっかえてアワアワしなくなるので、やってみるのをおすすめします。


こうして分けておくと、どうしても自分がやらなきゃいけない仕事以外は
パッと他人に振ることができるので、万一身内に不幸が!とか自分がインフルエンザに!
みたいなときに、1〜2時間指示出しの時間を取って携帯さえつながるようにしておけば、
あとは心おきなく仕事から離れることができるようになります。
(とはいえ突発引き継ぎで持ちこたえられるのは数日だと思うけど)

属人的な仕事、そうでない仕事

こうして「わたしでなくてもいい仕事」をたくさん小分けにして作って
どんどん人に任せて、自分はそれをまとめる仕事にシフトして手を空けておくというのは
自分を楽にするという意味もあるのですが、また違う意味もあります。


自分の持てるものに余裕を作っておかないと、周りのフォローもできない上に
新しい仕事が入ったときキャッチできないし、自分の下もつかえてきます。


もちろんそうやっていても大変で忙しい!という時期は来ると思うけど種類が違う。


いつまでも「忙しい忙しい」と細かい仕事を抱えて常に手を一杯にして、
目先のことだけでアワアワしているような幼稚な仕事のやり方をしてたら
自分の下が育たないし、下から見られたとき「がんばってもアレかぁ」になっちゃう。


わたしは自分の上の世代を見て「がんばってもまたさらに仕事が忙しく
しかも責任まで負って辛くなるだけなら、仕事がんばりたくないなあ」と思ったし、
上の世代が現場の仕事をいつまでもしているせいで、その人がどかない限り
自分はそこにいけない、という閉塞感があって、すごく苦しかった。


それはきっとその人たちが「誰にでもできる仕事」を抱えていたからだと思います。


仕事をする人として年数を重ねていくんだったら、「仕事がんばってる」って言うなら、
誰にでもできることからどんどん卒業して、「自分でなければいけない仕事」に
シフトしていかないといけないんじゃないかなあと思います。
それが「仕事ができる人」っていうんじゃないでしょうか。


属人的な仕事って何よ、というのは、

「デスクワーク/人と話す・交渉する」
「手を動かす/考える・発案する」
「ルーチン/新規・突発」

この分類でいく後者ですね。


「あなたの代わりはいくらでもいる」からこそ、
「あなたの代わりがいない仕事」にどんどん取り組みましょう。


もしかしたらそれは「夫」という仕事なのかもしれないし、
「親」という仕事、「子ども」という仕事なのかもしれない。
(親の介護とか考えるとほんとそう思う)


生きていく中で仕事が大事、家庭が大事、なんて比較は止めませんか。
仕事も家庭も、どちらも大事で、身の回りの人に対する自分の役目・役割をどう果たすかなんです。
その瞬間瞬間で、優先順位が変わるだけ。どちらも大切に、楽しんで取り組む方がいい。


なのでそう考えると、「妻が病気の時、夫は会社を休むべきか?」という質問は
実はあまり意味がないんです。そのときの状況によって結論が変わるから。


いまこの瞬間、「あなたの代わりがいない場所」を
最大限大切にする努力をするのがいいと思います。


☆関連:
「わたしはわたしの奴隷である」
http://d.hatena.ne.jp/hase0831/20090902
「わたしの代わりはいくらでもいる」
http://d.hatena.ne.jp/hase0831/20091009


☆関係ないけど好きなうた
「ぼくのおとうさん」
作詞 佐藤雅彦・内野真澄
作曲・歌 栗原正己

おとうさん おとうさん ぼくのおとうさん
かいしゃへいくと かいしゃいん
しごとをするとき かちょうさん
しょくどうはいると おきゃくさん


おとうさん おとうさん ぼくのおとうさん
はいしゃにいくと かんじゃさん
あるいていると つうこうにん


おとうさん おとうさん ぼくのおとうさん
がっこういけば せいとさん
でんしゃにのると つうきんきゃく


おとうさん おとうさん うちにかえると
ぼくの おとうさん