インターネットの備忘録

インターネット大好きな会社員がまじめにつける備忘録です。

「泥のように」打ち込めることをさがせ

あちこちで面白く拝見しているこの話題。


なんか今更ですがモニョモニョ感が消えないうちに
わたしも備忘しておこうと思います。


  • わたしの20代はひどかった


わたしは正確にいうとデザイン会社の営業から
ITベンチャーの立ち上げ総務とかお手伝いを経て
ある映像メーカーのWeb制作を担当することになり
気づけばモバイル業界→Web制作会社→現職
な感じなので、いかにも!なITではない。


社会にでてはや10年、最初の5年はお世辞にも
まじめに働いてきましたとは言い難く、最初の会社で
あっという間にストレス&過労で倒れて血を吐いてから
仕事で頑張ることから逃げ続けていた。


20代前半、1年程度で2〜3社転々として
23歳(だか24歳)で一緒に住んでいた恋人と婚約、
このまま主婦になるから仕事なんてどうでもいい、とも思っていた。


それがいろいろあってそのときの恋人と破局、
なんとなく派遣で入ったモバイル業界で仕事の面白さを知った。
いわゆる「ITベンチャー」で、派遣として入ったものの
いろいろ業務を任されて、必死でやってみたら面白くなり
3ヶ月たたずに社員登用してもらった。


その次に婚約した恋人に支えられながら
がむしゃらに仕事をして、途中で倒れて休職。
パニック障害で何度も救急車に乗った。


でも人生で初めて仕事を面白いと思えて、
家族や恋人以外に必要とされる楽しさを知った。


休職あけと同時に恋人と結納・婚約、支えてもらいながら
仕事に復帰して、あたたかく迎えてくれた人の
気持ちに答えようと必死でやった。
#もちろん冷たい人もいた


あまりに仕事が面白くなりすぎて
そのときの婚約者とは婚約破棄ということに
なってしまったけど、もうそのときはかなり仕事にのめりこみ、
自分のやってみたいこと、興味があることを仕事として
挑戦できる面白さに夢中になった。


この時点でもう20代後半。
早い人はある程度の実績や結果を出しているころ。


もうあとがない、と思って必死でやった。
婚約破棄もしたし、仕事に本気で取り組んだことがなかった、
という事実に気づいてしまって、もう逃げたくない、と思った。


必死でやったら世界が広がって、人生が変わった。
いやなことがあるとすぐ「辞めたい」「わたしには向いてない」
と思って逃げようとする自分が消えた。

  • もし違う業界だったら


どれだけわたしがのめりこんでやったとしても、
ここまで進むことは出来なかったかも知れない。


恥ずかしながらわたしには学歴もなく、
家柄もなく、ましてや輝かしいキャリアもない。


そんなわたしでも、自分ひとりが食べていけて、
充実感があって、やりがいがあるポストと仕事を
持てるのは、この業界独特の「なんでもあり」な
空気のおかげなのだとおもう。


何しろ忙しい。
次から次へと新しい技術や企画があらわれる。
うっかりしてると競合にもっていかれる。


だから、いちいち学歴とかキャリアとか気にする前に
結果を出してしまえば、うだうだ言われることは少ない。
言ってしまえば性別で差別されることも少ない。


女のわたしでも男の人と同じように働くし、
夜中まで会議だってするし、めちゃくちゃやりがいがある仕事を
ともすれば「エリート」な方達と一緒にすることだって出来る。


一瞬だけいた某広告代理店の子会社でも
同じようなことはできたけど、見えない学歴の壁、
キャリアの壁をすごく感じていた。


わたしがどんなに頑張っても、親会社のプロパーには
どうしても届かないし(仕事も年収も)どんなに自分が知識を付けても
その人たちの駒にしか過ぎない、という虚無感があった。


この業界にはそれがない。
ない、というか、あるんだろうけど、そのつながりが弱い。
言い出したヤツがやる、やりきったヤツがエライ、
そういうすがすがしさがある。

  • ただそのぶんすごく辛い


ここまでやれば終わり、ということがないというのは
24時間無限に勉強し続けられるということ。


わたしがチャラチャラお酒飲んだりしている間に
他の人はセミナーに出たり勉強をしたり
前に進む努力をしている、とおもうとぞっとするときがある。


最近は割りきって切り替えることが出来るけど、
あっという間に抜かれるかも、という恐怖はある。


わたしだってコツコツ積み上げてきたわけじゃないから、
ちょっと気を緩めたすきに出し抜かれるなんてあり得るのだ。
しかも確固たる何かを手にしていないわたしみたいな
中途半端な営業なんて、なおのこと。


でもこれはトレードオフなのだとおもう。
わたしだって学校を出てコツコツ下積みのような仕事をして
今のレベルの仕事ができているわけでもない。
ほんとうにわらしべ長者みたいな感じで
ラッキーや偶然の連続の上、気づいたらここにいられた、
という感じなのだ。


でもそれは努力をしていたから巡り会えたラッキーだった、
と胸をはることはできるし、掴むために必死にもなってきた。


ただ、転職してネット業界を離れることにした、という友人の
「きりがないから」
という台詞を思い出すことはある。


きりがないのだ。
勉強しても、結果を出しても、もっともっとすごい人が、
もっともっと面白い企画が、もっともっとすごい技術がサービスがあらわれる。


それらを知っておかないと、そもそも上がれないステージがある。
ひとつ上がったらもっと上がりたくなる。
だから「きりがない」のだ。

  • 「10年は泥のように働いてもらう」という言葉の意味


「10年は何かを諦めて会社の奴隷になれ」
という意味とは違うとおもう。


逆にとらえると、10年、必死になって働くための環境を
会社が用意してくれる、と思えばこんなに素晴らしいことはない。


泥のように、仕事にひたむきに、必死に打ち込むためには
この会社は潰れるのだろうかとか自分のポストを守るために
心を砕かなくていい、というのはいい環境だとおもう。


ある人が言った言葉、
「風邪なんかで休んだら、休み明けに自分の席があるか不安だ」
という台詞は、当時ほんとうに嘘じゃないと思った。


自分がいないたった1日で嘘みたいに状況が変わる。
そういう環境で、必死で仕事に打ち込むなんて無理だ。
同僚も、上司も、会社も信用できない状態で。


「本気で人材を育てるつもりなら、十年単位の時間と費用をかける必要がある。経営者にとって最大の仕事だ。」http://blog.goo.ne.jp/chorinkai/e/94a4561ce8f3661624dd94bdab5a9524



こちらの意図が伝わった上で聞くのとは大違いで、
今回の発端はこれをねじ曲げてIT業界がいかに辛く、苦しく、
おもしろみもない業界だと言われているようだからじゃないだろうか。


そして、多くの人たちが辛く、苦しいことの多い業界だと肯定しつつ
それをはるかに上回る楽しさ、面白さ、があることを
伝えたいと思っているんじゃないだろうか。

  • わたしはIT業界が好き


あんまりまとまりがないエントリーになりましたが
いま、わたしが「なんでそんなに仕事が好きなの?」
「仕事楽しそうだよね〜」といわれる状況にいられるのも、
すべてこの業界に飛び込んだおかげだからだと思っています。


わたしがいまいるのはいわゆるネットベンチャー?という
くくりに入る会社かもしれないけど、身近にいる技術者の方たちの
キラキラした、自分たちに誇りを持っている様子、というのは
ほんとうにとてつもなくかっこいい。


こういうキラキラした人たちがいるから新しいサービスが生まれ、
未来にはもっと楽しい生活が待っているんだろうな、とおもうと、
そういう人たちの支えになりたいと思わずにいられません。


だから若い人たちには、
「10年間泥のように働け」ではなく、
「泥のように働くほど自分を捧げられるものを探せ」
と言いたい。それはすぐ見つかるものではないし
見つけようとするにはたくさん考えなきゃいけない。


自分とも向き合わなくてはいけないし、
自分が将来どうなりたいかを必死で考えなければいけない。


それをくぐり抜けたら、きっと楽しい世界が待っていると思います。
わたしはそれが今の仕事でした。もちろん仕事でなくてもいいけど。


よっぽどの人でない限り、平日の半分近くをしめる仕事時間です。
自分を殺してやり過ごすようなやり方はして欲しくないと思います。

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「10年は泥のように働け」「無理です」――今年も学生と経営者が討論
http://www.atmarkit.co.jp/news/200805/28/ipa.html


「IT技術者はやりがいがある仕事か」---学生とIT産業のトップが公開対談
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080528/304458/?P=1&ST=skillup


まず入社して十年間は泥のように働いてもらう――丹羽宇一郎さん
http://blog.goo.ne.jp/chorinkai/e/94a4561ce8f3661624dd94bdab5a9524


大手メディアによるIT業界ネガティブキャンペーン
http://blog.livedoor.jp/lalha/archives/50222469.html


「泥のように働く」の元々の話がIPA討論会での意味合いと全然違っている
http://d.hatena.ne.jp/t_yano/20080529/1212076447


夢のあるITには若手が殺到している 刹那的な業態が見切られただけ
http://d.hatena.ne.jp/mkusunok/20080530/it