インターネットの備忘録

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「blood on the moshpit,つまりオレたちのことさ」/映画『モッシュピット』明日から!

 ということで、岩淵弘樹監督・映画『モッシュピット』いよいよ明日から!
直前になり完全にソワソワソワソワしています。

11月18日にLIQUIDROOMで目撃したあのモッシュピット、その様子が17台ものカメラで映像に収められ、映画になり、大きなスクリーンで観ることができる。そして不思議なご縁がつながり、岩淵弘樹監督インタビューまでさせていただいて、それが映画のパンフレットとして掲載される。しかもピンチヒッターとはいえ、プロデューサーのカンパニー松尾監督にもインタビューさせていただいてしまって、こんな出来事はこれから先、わたしの人生で二度とないと思います。

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 気持ちを落ち着かせるために「で、結局どんな映画なのよ」というのをまとめてみたいと思いますので、東京近郊の方、この時期に東京に来る予定のある方は、ぜひとも万障お繰り合わせの上、劇場まで足を運んでいただければと思います。そしてできれば、いえ、なるべく、というか、絶対に、パンフレットも、買って読んでいただけると嬉しいです。

上映情報などはこちらから、どうぞ。

ユーロスペース

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監督・岩淵弘樹さんって誰?

映画監督。2009年、『遭難フリーター』という工場の派遣社員として働く自分を、セルフドキュメンタリーとして撮影した作品が話題に。

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昆虫キッズ、どついたるねんなどミュージシャンのMVを制作したり、映像で追いかけていく中、2015年、カンパニー松尾監督が率いるAVメーカー「ハマジム」に入社。
ハマジムではAVを撮らずに動画サイト「PG byHMJM」の編集長をされています。その傍らでミュージシャンの映像作品を作り続けていて、NDGの「生きる」やハバナイ「Blood on the moshpit」のMVを制作、それがカンパニー松尾監督の目に止まって、劇場公開に。

個人的な岩淵監督の印象は、まっすぐ、真面目、不器用、一本気、ぶっきらぼう、実直、無骨。そんなイメージ。

遭難フリーター』は思ったより上映時間が短く、ラストは夜明けの空に放り投げられたような、どこか消化不良なまま終わる作品だったのですが、そこが良かった。様々な問題が絡みあった状況に対して、無理に「分かりやすい回答」を出そうとしていないように見えて、わたしはそれをとても誠実だと感じました。

映画『遭難フリーター』公式サイト

Have a Nice Day!って誰?

本作の中心となるバンド。リーダー・ボーカルの浅見北斗、シンセサイザーのさわちゃん、ドラムのチャンシマ、内藤さんの4人組。

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わたしはShin-jukeというイベントで観たことがあったはずなんですが、なんかもう観客エリアがグッチャグチャだったので、よく覚えていませんでした。とはいえ、フライヤーやイベント告知でよく名前を見かけていたバンドだったので、11月18日のLIQUIDROOMでのパーティ告知を見て「帰りがけだし寄ってみるか」とフラッと足を運び、初めてちゃんとライブを観たら、一気に引き込まれました。観客たちが激しく暴れるフロアとは対象的な、切なさが怒涛のように押し寄せる音楽と、ロマンティックな歌詞が特徴です。

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正直、音源では魅力が伝わりにくいバンドだと思います。そして一番わたしが引きこまれたのは、浅見北斗さんの佇まい、MC、彼が発する言葉でした。うまく表現できないのですが、とても切実で、単なるいち視聴者であるわたしの内側に飛び込んでくるような部分があり、見ていると、まるで常にふさがらない「かさぶた」のようだと感じます。

そしてその疼痛を感じたくて、また彼らを探してしまうのです。

NATURE DANGER GANGって誰?

バンド……?と言っていいのか、そして何人メンバーがいるのか、なんというか、とらえどころのないグループで、その狂ったパフォーマンスが強烈です。

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いつだったか覚えていないんですが、たぶん下北沢で、DJ Aprilさんに「こいつらヤバいですよ」と教えてもらって観たのが最初。ステージの上も下も関係なく暴れ回り、叫び走る脱ぎ踊る様子はまさに「奇祭」という感じなんですが、狂った祭りが何かをかきたて楽しくなってしまうのは日本人の気質なのか、イベントに名前があるとテンションが上がってしまうバンドです。

一方で、本編でも登場するMCのセキさんは聡明で懐が深く、人間性を感じさせます。本編(の、プロローグ編)で印象に残ったのは、セキさんが語った「コミュニティに馴染めなくてはじき出されたマイノリティがつるむと、またコミュニティが生まれる。そしてそのコミュニティにも馴染めなかったマイノリティが、また新しくコミュニティを生む」という言葉。「そんでそのコミュニティからもはじき出されちゃったのがNDG!」とセキさんが笑いながらおっしゃったところで、一気に好きになりました。

NDGの自由で明るく、すべてを飲み込んでしまう美しい強さはそこに起因しているのかもしれません。

おやすみホログラムって誰?

八月ちゃん、カナミルの2人組アイドル。

アイドル……でいいのかな?たぶんいいはず。

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今回の映画で存在を初めて知ったのですが、まず何より彼女たちのパフォーマンスの激しさに驚きました。すんごい可愛いのに、クラウドサーフするしマイクでガンガン客を煽るし、観ていると「かわいい!」「かっこいい!」「かわいい!」「かっこいい!」という感情が高速で交互にやってくる、素敵な女の子たち。何より作りすぎてない、パッケージ化されてない感じがとても好きです。

八月ちゃんはたまに赤ちゃんみたいな表情を見せてドキッとするし、カナミルちゃんが肩出しして煽ってる瞬間に、ものすごいエロスを感じます。

映画『モッシュピット』って何?

20015年11月18日、恵比寿LIQUIDROOMで行われた、Have a Nice Day!(以下ハバナイ)のニューアルバム「Dystopia Romance」リリースパーティ。そこに向かう出演者やファン、関係者といった様々な人々を追った映画です。監督は岩淵弘樹氏。制作・配給は『テレクラキャノンボール2013』などで知られるAVメーカー「HMJMハマジム)」です。

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これだけ聞くと、単なるミュージシャンのドキュメンタリー映画っぽいのですが、そのリリースパーティがクラウドファンディング資金を募集したものであったこと、その形態を取ったことで資金を出したファンたちが「これは俺たちが買い取ったパーティだ」と言って自ら主催者のように動き出したこと、ハバナイと蜜月期間にあったバンド、NATURE DANGER GAND、おやすみホログラム、それぞれのメンバーの葛藤、や苦悩、涙。そして、そのすべてを仕掛けた、ハバナイ浅見北斗という男が描いた夢と世界観を捉えようとした作品です。

聞けば聞くほど、浅見北斗さんの求心力、ブラックホールのように様々な人が吸い込まれ、魅了され、渦中に飛び込んでいく様子に寒気を感じるほど。また、完全な私見ですが、もしかしたら、浅見さんご自身も自分で語る夢に自らが飲み込まれていってしまっているのかもしれません。

わたしが最初に引きこまれたMVがこの『blood on the moshpit』で、このMVの仕上がりを見てカンパニー松尾監督も劇場公開を決意したそうです。そのくらい、浅見さんの世界観と、岩淵さんの表現が咬み合って、ぞくぞくするような映像に仕上がっています。

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今回のエントリタイトルは、このMVのモノローグから。

「We're the Have a Nice Day!  blood on the moshpit, つまりオレたちのことさ」

から始まる浅見さんのモノローグのバックでは、過去の様々なライブの光景、彼らの表情がくるくると映しだされ、彼らが走り抜けてきた時間を追体験しているようです。

ハバナイのパフォーマーであった内藤さんの不在、ばらけていくメンバーたちの感情、迷い、悩み、苦しみもがく浅見北斗さんの心境が、ご自身の声で淡々と語られます。LIQUIDROOM後の解散を暗示するような言葉でモノローグは締めくくられ、曲が始まります。

I’m dancing Forever
燃える夜に抱かれて
バラ色のウソとキスを重ねる
ライヒーライナウ
world is yours
迫り来る闇が街を飲み込んでゆく

生きてる意味などわたしは知らなくて
壊れたガラスの靴で踊り続ける
ライヒーライナウ
world is yours
君は今夜すべてを手に入れる

11月18日、LIQUIDROOMでのリリースパーティは、大成功と言って過言ではなかったと思います。少なくとも、フロアにいたわたしは多くの人たちの幸せに満たされた笑顔を見たし、わたし自身も言葉にできない空気に全身を包まれ、身体に熱狂を取り込んでしまったまま、今も過ごしています。

それならば、彼らはすべてを手に入れたのでしょうか?

もし手に入れていたとしても、入れていなかったとしても、彼らは常に「過程」の中にいて、目を離したらあっという間に違うものへ変貌してしまいそうな危うさを感じます。それは彼らだけでなく、彼らを取り巻くバンド、シーンも同じで、すべてが、何もかもが「今この瞬間」にしか顕出しない。

今この時間に、彼らと同じ時代に生き、彼らと同じ言語を話し、彼らの脈動を直ぐ側に感じられるかもしれない瞬間を生きていられる幸福と、そのチャンスを逃さずに、しっかり見つめていたいと思っています。

映画は5/21(土)から2週間限定レイトショーです。 

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そして5/25(水)には、渋谷O-WESTで彼らのワンマンライブが開催されます。

もちろんわたしも両方行きます。劇場で、そしてモッシュピットでお会いしましょう。

 

Anthem for Living Dead Floor

Anthem for Living Dead Floor

 
Dystopia Romance 2.0

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今日はそんな感じです。

チャオ!