インターネットの備忘録

インターネット大好きな会社員がまじめにつける備忘録です。

ドーナツと文庫本

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病院の帰りというのはどことなく気だるいもので、ご褒美として付き添いの夫と一緒にドーナツショップへ入った。甘いドーナツとカフェオレ、甘美な並びに自然と顔もゆるむ。

夫が頼んだチョコレートチョコレートしたドーナツと、自分のシュガーレイズドなドーナツをひとくちずつ交換して、温かいカフェオレを飲むと、身体の芯にあった疲れがじんわりとほぐされる気がした。

病院は苦手だ。何より待たされるのが嫌だし、ベルトコンベアに乗せられるように次から次へと検査を受けていると、自分が単なる「姓名」というラベルを付けられたどこにでもある個体のように感じられる。事実そうだとしても、あまり楽しいものではない。

なので病院帰りは自然と無口になってしまうのだが、夫がそれを許してくれるのでとても救われている。「ぼんやりの気分?」と聞かれて「ぼんやりの気分」と答えれば、向かい合わせでもそっとして置いてくれるのは、何よりありがたい気遣いだと思う。

糖分を摂取してだいぶ疲れがまろやかになった頃、夫が「いま読んでる本、面白いんだよ」と話をしてくれる。わたしが好みそうなエピソードが書かれたエッセイ。最近は小説や実用書よりもとりとめないエッセイに気持ちが向いているので、楽しく話を聞いた。夫は「短いエピソードだから、いまちょっと読んでみてよ」とポケットから文庫本を取り出した。

夫は本の扱いが乱暴なので、カバーは外され、たくさんのドッグイヤーがつけられている。本を購入するときに少しの折り目がついているだけで他の一冊を探してしまうわたしから見ると信じられないけれど、その真逆なところがいいのかもしれない。話し声で賑わう店内で、5〜6ページぶんのエピソードを読んだ。わたし好みで楽しくて、ふっと笑えるよいものだった。「おもしろい」「でしょう」と感想を伝えて夫に本を返し、「読み終わったら貸すね」との言葉に笑顔で頷いた。

ドーナツも文庫本も、お互いがお互いの好みで選んだものを交換し、感想をシェアしていくことで、夫婦の間にできていくものは何だろう。楽しいも悲しいも、悔しいも嬉しいもシェアして、その感情について話し合って形作られる何かはどんなものだろう。これからが楽しみだな、と思ったお話でした。

 

今日はそんな感じです。
チャオ!