先日、「おもしろダークネス」というイベントに行ったんですね。
音楽イベントなんですけど。まーこれがなにしろ面白いイベントだったんですが、演目のひとつに、落語もあったんです。当日まであまりちゃんと把握していなくて、そうか落語もあるのかー程度で思っていたら、お話されるのが今注目のNATURE DANGER GANGのメンバーでもあり、さらに立川談春さんのお弟子さんだった方だというので、大変驚きました。
異色の経歴!落語家からパンクロッカーになった立川流の春太郎 | 索楽
そんでちょっと本題からそれちゃうんですけどまずNATURE DANGER GANG、わたしも1〜2回しかライブ観たことないんですけど、これがすごい。とりあえず動画を貼っておきます。
NATURE DANGER GANG - くノ一Bomber!@ ハイパーアワー ...
でなんじゃこりゃーと思ってたらそういえばおひとり和装の方がいて、その方が春太郎さん。で、師匠の立川談春さんといえばあの!名作!「赤めだか」を執筆され、なかなかチケットが取れない立川流でも人気高い噺家さん。
もし「赤めだか」まだ読んでない人がいたらすぐに読んでください。名著です。
で、これら踏まえて見るとなんかもうえっなんでいまここにみたいなすごい人がスッと出てきて落語をし始めて、動揺しながら西麻布のクラブでなぜか正座して落語を聞いていたわけなんですが、演目が「子ほめ」だったんですよ。
高座は素晴らしくて笑わせていただいたのですが、でも「子ほめ」っていうと与太郎もので割りと明るい感じの笑いだし、意外だなーと思いつつ楽しく聞き終えたわけですけれども、そのあと「おもしろダークネス」と題したイベントでかかるなら、こんなのも聞きたいよねっていうのを考えたので、やっとタイトルに戻ります。前段が長くなっちゃった。
寿限無
ざっくりあらすじ
ある夫婦に生まれた子供、可愛さあまりに「いつまでも元気で長生きできるように…」と縁起のいい名前候補をたくさん集め、迷いに迷って、なんと全部それを名前に付けてしまった。
その名前を「寿限無寿限無 五劫の擦り切れ 海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末 食う寝るところに住むところ やぶら小路の藪柑子 パイポパイポパイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの 長久命の長助」という。
ある日、その子供が川に落ちてしまい、友達が母親の元に駆けてくる。「おばさん大変だ、おばさんのところの寿限無寿限無 五劫の擦り切れ 海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末 食う寝るところに住むところ やぶら小路の藪柑子 パイポパイポパイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの 長久命の長助ちゃんが、川に落ちて流されちゃった!」
それを受けておかみさん、「なんだって!うちの寿限無寿限無 五劫の擦り切れ 海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末 食う寝るところに住むところ やぶら小路の藪柑子 パイポパイポパイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの 長久命の長助が、川に落ちたんだって!」
そのやりとりを繰り返しているうちに助けが間に合わず、子供は川に流されて、溺れ死んでしまったのでした。
というもの。長えよ。
サゲの部分は今ほとんど「喧嘩をしてたんこぶが出来たが、長い名前をやりとりしているうちに、たんこぶがひっこんでしまった」という柔らかい内容に改変されていますが、最初に聞いたときに「流されて死ぬて!」と子供心に衝撃でした。カジュアルに子供死にすぎ。ちなみにこれを小学生の頃に誰よりも早く覚えて得意気に教室で披露したという恥ずかしいエピソードがあるんですが、いまだにフルで暗誦できます。
川で溺れ死ぬverの動画、探したんですが見つからなかった…どこかにないかなあ。
後生うなぎ
ざっくりあらすじ
ある大店のご隠居は大変な信心家で、殺生が大嫌い。夏場に蚊に食われても、殺さず我慢しているような人。ある日お参りに行った帰り道、橋のたもとに差し掛かると、鰻屋のおやじが蒲焼きをこしらえようとまな板で格闘中の場面に出くわす。
そんな殺生はよくないと交渉の末、うなぎを高値で買い取ると、川へポチャン。「ああ、これはいい後生をした」とご満悦で、鰻屋も高値で買い取ってもらえるので次第にご隠居の来訪を待ちわびるようになった。
ところがしばらくご隠居が来なくなる。当てが外れて鰻屋も大弱りだったところへ、ふらりとご隠居が現れる。ところが仕入れが間に合っていない。うなぎがないので大慌てで何かないかと探したところ、「生きてるもんなら、なんでもいいだろう!」となんと自分の女房をまな板に載せてしまう。そこへご隠居、「おい、いったいそれをどうする気だ!」鰻屋は「へえ、蒲焼きにするんで」と答える。「馬鹿野郎、そんなことをしてはいけない。いくらだ」と買いとったご隠居、ふっかけられた金額を支払うと、「もうああいう男に捕まるんじゃないよ」とかみさんを前の川にドボーン!
それを見ていた鰻屋のご主人、「ああ、これはいい後生をした」
おかみさんの扱いがヒドい!!!!
落語はわりとこういう「怖いカミさんを厄介払いしてラッキー」系の話が多いんですが、まさか川へドボーンてお前!気づけよご隠居!という馬鹿馬鹿しさ。
ちょっと音がワンワンしてますが、桂歌丸のが好きなのでその動画を。
余談ですけど一度、生で聴いた歌丸師匠の怪談話がすごいよかったです。艶っぽい女性を演じるときのお声が本当に素晴らしかった。また独演会行きたいな。
黄金餅
ざっくりあらすじ
ある僧侶、寺を持たずに托鉢をしながら貧しい生活を送っていたが、あるとき重い風邪を引いて寝込んでしまう。隣の部屋に住んでいる行商が看病に来て、「なにか食べたいものはあるか」と尋ねると、「あんころ餅がたくさん食べたい」という。なけなしの金を叩いて行商が餅を買い、届けると、僧侶は「人前でものを食うのは嫌いだから」と追いだしてしまう。
訝しがった行商が壁の穴から覗き見すると、僧侶があんころ餅を開いて餅に金子をくるみ、丸呑みし始める。金銀入りの餅を飲み込んだ僧侶は苦しそうに呻いた挙句、介抱むなしくそのまま死んでしまった。行商は突然のことに驚きつつも、腹の中にある大量の金銀を自分のものにしようと思案を巡らせ、あることを思いつく。
しばらくのち、近所に挨拶を済ませ火葬場に運ぶと、他の参列者がいない隙に火葬場の人間を脅して遺体を火葬させる。しかも「腹のところは生焼けにしろ」と注文までつける。
そして焼きあがった遺体の腹を割って金銀を取り出して、それを元手に目黒で餅屋を開き、「黄金餅」と名付けられた店の餅は江戸の名物となった。
なんか…もう…心底ドン引きするほどダークで鬼畜なネタなんですけど、落語で聴くと、遺体を火葬場に運んでる道中とかめっちゃ楽しそうで思わず笑ってしまう。この道中をワーッと語る箇所は絶対に聴き逃さないでください、最高なので。
こういう、人間のダメさ、汚さ、卑しさをおもしろおかしく笑い飛ばすのが落語の醍醐味だと思うのですが、まさに黄金餅はその真骨頂なのではないかと思ってます。「人間ってバッカだなあ」と思うなら「火焔太鼓」もグルーヴ感あって好きなんですがダークではないので今回は除外。
わたしは噺家の中ではもっとも古今亭志ん生を愛していて、「黄金餅」は師匠が得意にしていたネタということで知りました。やっぱり良いなあ…。好き……。
ということで久しぶりに3つ選んだシリーズ書いたらくたびれた。他におすすめあったらぜひ知りたいです。
今まで接点なくて今回ご興味わいた方、ぜひ聴いてみてください。CDもいいよ!
古今亭志ん生 名演大全集 1 火焔太鼓/黄金餅/後生うなぎ/どどいつ、小唄
- アーティスト: 古今亭志ん生(五代目)
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2005/10/19
- メディア: CD
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今日はそんな感じです!
チャオ!