インターネットの備忘録

インターネット大好きな会社員がまじめにつける備忘録です。

「社員を使い潰す」デメリット

先日のエントリに大きな反響をいただき感謝いたします。
言葉足らずだったかなと思う部分を補足したいと思い別エントリにて備忘。

社員を使い潰すデメリット

社員側の目線で「逃げろ」と書きました。
もちろんその意見は変わらないのですが、その前にやれることがもっとあるはず、というのをずっと考えています。
次の飛び石へジャンプする前にもっと下調べをしておけば、うんと遠くまで飛べるかもしれません。もっと手前で、激務と自分自身の技量とのバランスをうまく取って自己防衛できれば、身体を壊さずに済んだかもしれません。


経営目線で見たときにも、社員に逃げられるよりは、もっと手前でギブアップサインを出して貰うほうが長期的にはメリットが大きいです。というか、せっかく採用した社員が潰れてしまう方が会社にとってのダメージは大きい。実際に経営に近い立場にいたときに感じたことを列挙します。

採用にはとんでもなくコストがかかる

まず人材を新たに採用しようとしたときに、とんでもなくコストがかかります。
求人広告を出すなら広告費が、人材会社を使うならエージェントへのマージンがかかります。

最悪、掲載費のいらない自社ウェブサイト上で告知を出したとしても、応募者からのメールを捌き、一次審査をし、面接の日程調整をし、面接を行い、選考をし、採用/不採用通知を送り、初日に備えてPCやデスクなどの備品を揃えて席を用意する。これ以外にも人事手続きの手配や雇用契約など、様々な人を巻き込んで進むのが「採用」です。


これらにまつわる「出るお金」以上に、ベンチャー企業のメンバーを圧迫するのが「時間コスト」です。
採用となれば担当チームの上長なりを面接のために拘束しなければなりません。業務拡大路線の上での新規採用であればまだしも、「元々いた人材の穴埋め」となると「目先の売上を立てるため今すでにパンパンで、もう時間を捻出できないよ!」という悲鳴を無視して「未来」のための時間コストを投入しなければいけません。
そのしわ寄せは現場に回ってくるわけで、この加減を誤ると連鎖的に退職者が続出し、穴埋めのためにまた時間コストを投入するという状況を招いてしまいます。

教育にもとんでもなくコストがかかる

さてめでたく採用者が決まり、労務関係の処理やデスクの準備、新しいPCのインストールやメールアドレス・社員証の発行などバックオフィス系が死にそうになりながら勤務開始の場を整えたあと、いよいよ新入社員が登場します。


スケジュール管理や社内フローなどのルール、会議室の使い方から備品の場所、ランチはどうするかあれこれ、手取り足取り教える必要はないにしても、新入社員は都度聞かないと分かりませんし、すでにいる社員は当たり前のことだと思って教え漏らしていることがあり「いちいち聞くなよ、チッ」みたいな空気になることもしばしば。
複数社で働いてみて、本当に会社それぞれによって細かいルールがあり、それは実務をやってみないと分からない/意識していないので教えられないことが多いと感じました。


採用した人材が期待しているスキルを下回っている場合に限らず、「その会社のルール」に沿った成果物を出せるようになるまでは、ある程度上長なりサポート係のチェックが必要になってくるのもよくあることで、「新しい人が来るから楽になるかと思ったら、指示→作業→チェックが必要になるのでむしろ仕事が増えた」と泣きべそをかいたこともあります。


この流れでイレギュラーなのは超異次元採用で「社長の友達」とか「社長の元同僚・上司」みたいな人が突然ポーンと現れる場合ですが、こういう人達は別ラインでシビアな責任を持たされていることが多く役付き陣と空中戦を繰り広げてくれている間に現場は粛々と実務を進めればいいパターンです。
ただ「急によく分かんないプロジェクト引っ張ってきてプレゼン作業をねじ込まれた上よく分かんないままポシャる」みたいなメンタルゲージを削る動きをすることもあるので要注意。

社風・会社の文化に馴染めるか採用してみないと分からない

さて様々な段階を経てある程度会社の実務に慣れてきたときに出てくるのがここです。
小さい会社に限らず、スピード!!スピード!!スピード!!とか言う会社とか朝礼で社訓を暗誦しなければいけない会社とかトイレに「会社のミッション」がでっかく掲げてある会社とか急成長を遂げようとする会社はだいたい新興宗教的な匂いがします。一体感を持って会社を運営するにはそれなり「洗脳」的な要素も必要で、心酔した人間が多いほど社内スタッフの結びつきは強固になりますが、それに馴染めないとあっという間に辞めて行ってしまいます。
激務であれ仕事を遂行するだけならまだしも、謎の社内行事などにも参加を強制されたとき「いいですね!面白いですね!」と喜んでくれるのか、「えっそんなことしてんの引くわ…」となるのかは、実際にやってみないと分からない。


ある程度、社風が強烈で外部にも「あそこはああいう会社」と伝わっているならまだしも、そういう強烈な会社はやはりまだごく一部で、入ってみて「あれ…なんか……変…?」というボディーブローがじわじわくるヘンテコ会社の方が圧倒数ではないでしょうか。
「なんか変」の積み重ねと激務、それぞれ独立したモヤモヤのコンボが炸裂し「もうダメ!」となったとき、人は転職を考えたり身体を壊すんだと思います。

会社も社員も長く付き合える方が絶対に良い

自分自身の技量を計りきれずバランスを崩してしまったときにはすぐ逃げろ、と思っています。でも、本来であれば身体も壊さず、会社も退職せず、コツコツ自分のキャリアを積んでいける方がいいに決まっているんです。

そのためには、働く自分自身で自己防衛をすることも必要でしょうし、前述の「会社にとってのデメリット」を意識して、「自分が無理をしすぎることは会社のためにならない、むしろ迷惑になる」と自覚した上で、適正な仕事との付き合い方を模索していくべきですし、経営者側の苦労を少しでも理解してあげて欲しいなと思った次第です。


本当は「激務からの自己防衛」の部分でどんなことしたらいいか色々考えてて、それを備忘しようと思ったんですがその前段で長くなって疲れちゃったので、今日はこのへんで。