インターネットの備忘録

インターネット大好きな会社員がまじめにつける備忘録です。

「Top Design」で感じた円滑なプロジェクト遂行のためのメモ

リアリティ番組が大好きなことに気付いたはせおやさいです。
http://www.hulu.jp/top-design

HuluがNBCユニバーサルリアリティ番組を配信しはじめたので、もちろんティム・ガンのファッションチェックは3回ほど全エピソード観たのですが、他になにかないかなーと思って見始めた「Top Design」。
邦題が「インテリアデザイナーズ・バトル」という驚きのダサさなのですが、つまりそういう内容の番組です。


12人のインテリアデザイナーが集められ、様々な課題をこなしていきながら1人、1人と脱落していき、最後の1人を目指す、というのが大枠の主旨。
最後まで残ったデザイナーは10万ドルと、なんか超豪華な車、あとはELLE DECOに掲載される権利を得ます。



↑審査員の一人、ELLE DECOの編集さんだそうですが、言うことがキツくてでも鋭くて、超好き。


毎回テーマは違って、顔も分からないクライアントの私物だけを見て部屋をデザインしたり、最初に与えられたプロフィールから考えたデザインを大幅に変更しなければいけなくなるほど重要な後出しの要素に振り回されたり、単純に超時間がなかったり、毎回よく思いつくなあ、というような課題とハードルの設定が楽しい。
わたしはその中でも3話のビーチサイドの課題と、6話のELLE DECOのパーティ会場の課題、7話のレストランVIPルームの課題が好きです。華やかだし、発想も楽しい。


で、12人もいるとさすがに1人ずつ…というわけにもいかないのか、くじ引きでチームに分かれて団体戦になったり、毎回居室のデザインではなくビーチサイドのカバナだったりパーティ会場だったり、不得意なことにも取り組んでいかなきゃいけないのを見ていると、プロジェクトの遂行とチーム運営の参考になるなあと思えるポイントがたくさんあったので、メモしました。

どんな仕事でも絶対にしてはいけないこと

番組では大きな課題を与えたあと、時間で更にギュウギュウとプレッシャーをかけて参加者を追い詰めるんですが、時間がないって本当に大きい重圧です。そういった重圧下だと自分の意見を通すために細々とした気遣いをする余裕がなくなって、他者に対して感情的になって良くない態度をとりがち。
こういったリアリティ番組だとそれぞれの参加者が個別に「あのときはこうだった」という感想を話すシーンが入るので、どういう態度が相手のやる気を削ぎ、パフォーマンスを低下させるかがよく分かります。

  • 理由のない却下

「ダサい」「ありえない」みたいな、人格否定とも捉えられないダメ出し。
「その色は今回のデザインにそぐわない」「寝室にその素材を取り入れるべきではない」と説明すれば議論のしようもあるのに、それまでのイライラも加わってついバチーンと言ってしまうこの態度はかなりマズい。

  • 後ろ向きな姿勢

前項とも関連するんですが、そうやって無下に自分の意見が却下されてしまうことが続くと、「じゃあもういい」「わたしの意見は何一つ通らないなら、アシスタントに徹する」みたいに退いてしまうのって(先入観なのですが)アメリカの人でも同じなんだなーと思ってしまいました。
でも、その態度は他の人にも不快感を与えてさらにネガティブな空気を作ってしまい、結果的には良い作品を完成させることからどんどん遠のくんですね。むずかしいなー。

  • 敬意のない否定

理由のない却下よりひどいのが敬意のない否定。
「あなたにはこれの経験がないでしょう」「ボクはニューヨークの洗練されたデザインが分かってるけどキミは違う」みたいな、見下し+否定は最悪のコンボなんだなと思いました。
何か意見を切り捨てるときに相手の人格否定もついでに入れてしまうのは、感情的になってるとき割とやりがちなので、気をつけようと思いました…。

優先して解決すべき致命的な問題

最初に課題の提示があり、それに参加者がウワアってなってるところにダメ押しでもっと重い試練を与えるのがこの番組のエグいところでそこが大好きポイントなのですが、だいたい参加者たちが頭を抱えがちになるのはこのへんのトラブル。

  • 最初のオーダーから漏れている重要な要件

大人の部屋だと思ってたのに子供部屋だった、男性か女性か分からない、などなど。
番組の中でも参加者たちは「クライアントに会って人となりや好みを聞く前にデザインを始めるなんてありえない」と困惑しているのですが、着手前のヒアリングって本当に大事なんだなーと思います。

  • 予定外のトラブル(資材の破損・サイズの変更)

インテリアデザイナーたちは大工さんとパートナーを組んで短時間で仕上げをしていかなければいけないのですが、頼んでおいた家具が届いてみたら組み立てする必要があったとか、大工に買い物を頼んだら予算が足りなくて買ってこれなくて床材がない、とか、自分が関知できないエリアのトラブルって怖い。
こういうトラブルも「起こりうること」として織り込んで設計をしないと、最後に全部ウワアになってしまうので、毎回ヒヤヒヤします。

  • チームを組む相手との相性

ここがすごく面白くて、センスとか、志向とか以外にも、もちろん性格とかもやっぱり大きいんだなと思いました。でも「こいつ、すっごくイヤなやつ!」って言い合って「最悪だ!」って口論ばっかりしてたチームが結果、良いデザインとして評価されたりするので、すごい難しい。

でもお互い友好的に接することができて、リラックスして尊敬しあえる相手との仕事の方が、突然のトラブルに対応しやすいっていうのはありそうだなと感じました。
でも「一緒に仕事したいと思ってた相手だけど、今回の仕事の進め方はもう滅茶苦茶だよ」って不満を爆発させた参加者もいたので、ああなんかもう、見ててつらい。(でもそこが楽しい)

リーダーシップに必要なもの

チーム戦の回、あとは全員がデザインをプレゼンして最もクライアントに気に入られたデザイナーがリーダとして選出され全員でそのデザインを完成させる回、みたいな、リーダーシップをどうとっていくかを見る回もあり、そこで感じたのはこのあたり。

  • 明確なコンセプトとそれを周囲に理解させるだけの説得力
  • 各メンバーの特性を把握し、適切な役割を任せること
  • 時間と予算の配分をみて、何をどこで切り捨てるかの判断
  • メンバー意見を受け容れられないならその理由を説明しケアをすること

このへんはもうちょっといろんな回を細かく見てみたいと思います。
ただ、全員がデザイナーっていう、美学や強い意志を持った人たちの集まりだと、みんな個性も強いし気も強いっていう手強い集団なので、その人達をどうやってまとめていくかってすっごくハードな仕事だな…と痛感。
リーダー自身もデザイナーだと、他の人の意見よりも自分のデザインを取り入れたい、これが絶対に一番良い、っていうのもあるだろうし。

メンバーとしてすべきこと

このへんは、作品が完成したあとに有名デザイナーたちから受ける講評ですごくよく分かりました。とくに、自分の良さを発揮しつつ、課題のコンセプトをうまく表現し問題を解決しなきゃいけないときの、自我の出し退きの難しさ。

  • オーダーの意図とコンセプトを理解すること
  • 自分の意見やアイデアを声に出すこと
  • 意見やアイデアに固執し過ぎないこと

あとは、この番組だとチーム戦で戦って、チームごと退場になる場合と、チームの中から1人だけ退場という場合があるので、チームごとの場合でも1人だけの場合でも、負けて退場するとき「あそこでもっと自分の意見を通すべきだった」っていう後悔が強く残るのは、かなり辛いことなんだなと感じます。

評価者が果たすこと

ティム・ガンでも感じたのは、海外の番組のほうが、「評価の伝え方」が格段にうまい。
日本にもリアリティ番組的なものってありますけど、参加者の人格否定をして泣かせたり、頭ごなしに否定したりして見てるだけですっごい気分が悪くなることが多いのですが(なので最近のは見てない、改善されてたらごめんなさい)、このあたりの、ビシッと言いながら相手のプライドを尊重する、っていう技術はどうやったら身につくんですかね……。
あと具体的に講評をして色々話し合った結果を伝える際、最後の最後に「最終的には僕達の好みで選んだ」と付け加えるところに、われわれ審査員が責任を持って決めたんだよ、という決意が見えて、すごく良いなと思います。

  • すべきだったこと、すべきでなかったことを明確に伝えること

見ていて多いのは「納得していないのなら意見を言うべきだった」という指摘です。
参加者は組んだ相手との相性とか性格とかで意見が衝突して「もういいや」って諦めたり、自分のアイデアが家具として具現化されていくときに他のメンバーの意見でディティールを変えられていってしまったりすることがままあって、観てる側的には「そりゃもうあんだけ時間がない中でやってるんだからもういいやになっても仕方なくない?」って思っちゃうんですけど、それとこれとは別、というスタンスで指摘することが多い。それだけ大事なポイントなんだろうなと思います。

  • 仮に完成品がよいものでなかったとしても、その中にある良い点を評価し伝えること

毎回、その課題に対してどの作品が最も優れていたかを「トップデザイン」として選出するんですが、そうでない作品に対しても「色は最悪だったけど、構造はすばらしかった」みたいに、良い点をきちんと評価して伝えるのと伝えないのとでは相手のモチベーションがずいぶん変わるんだなーというのを実感しました。

  • 評価したポイントと評価しなかったポイントを感覚ではなく論理的に説明すること

構造、色使い、素材の選び方、コンセプトの表現、新規性のあるアイデア、みたいに参加者それぞれの得意技みたいなのがあって、なぜそれを評価したか/しなかったかをロジカルに説明するのは評価者の最低限の仕事なんだなと思いました。
というか、評価したポイントはもう少し感情的に、「わたしはこれが好きだったわ」みたいに寄ってもいいんですが、評価しなかったポイントほど具体的に問題点を指摘する必要があるんだなと思います。

ということで

色々書き連ねて長くなっちゃいましたが、お国柄やいろんな人の性格、あとは番組側が毎回頭をひねって考えたであろう課題の設定みたいなのも含めてすごく面白いので、TopDesign、すごくおすすめです!



一番応援してるゴイル。
家具にキャスターつけたり、船から着想を得たりしてアイデアが面白い。
パーソナリティも穏やかで他のメンバーとも友好的なんだけど、そのせいで発言を控えちゃったりしてるあたりも応援したくなるポイントです。